1話「魔界の少女」
あらすじ
母のお祝いと称した、おじさんが借りている屋台のおでんディナーを食べて家に帰ったリオンとアルデル。これからマテリアルピクターの研修生として講習や訓練が待っているのだ。
リオンはこれから始まる講習や訓練に、期待と不安を抱いて眠りに付くのだった。
※1話完結です。
10
家に戻って、自分の部屋のベッドの上で寝転がって本を読んでみた。
別に本を読んでいるわけではない、読んでる振りをしているだけ……。
頭の中ではこれからのことを考えているのだけど、ぼ~としててなんだか眠れない……。
何かしてないと落ち着かないのだ。
すると、コンコン、ドアをノックする音が……。
「どうぞ~」
あたしが声をかけると、
「リオン、寝てなの?」
ドアを少し開けると、兄のアルゼルが部屋をのぞいていた。
「兄貴も眠れないの?」
「うん、まぁね……」
あたしは部屋を出ると
「ちょっと外でも見に行かない?」と兄貴を誘った。
外といっても家の中庭なのだけど……。
縁側に座って、中庭を眺めてみた。
魔界の夜は薄暗い、昼間は薄いピンクかかった空も今は青紫の色だ。
「人間界の空って青いんですってね。」
「そうみたいだね・・・」
「夜はどうなのかしら・・・?やっぱり魔界と同じこんな感じの空なのかな?」
「どうだろう?また見た事も行ったこともないし……、研修が始まれば見れると思うよ?」
「……、人間界か……」
あたしはうつむいて、少しため息をついた……。
「怖い?」
兄貴があたしの顔をのぞいてきた。
「分からない……、教科書じゃ人間は同族で殺しあったりするって書いてあったし、あたし達のこと「悪魔」とかいって化け物呼ばわりして差別したりするって言うし……」
「でも、人間は俺達の姿を見ることはできないって先生が言ってたよ。人間は魔力や霊力が低すぎて霊体を見ることができないらしい」
「でも、中には見える人もいるって言ってたわよ?」
「見えるといっても俺達が見れるわけじゃないみたいだよ、死んだ霊とか天界の住人とかが見れる位だって。だから怖いことはないって言ってたよ」
「ホントかしら・・・?」
あたしはまだ納得できなかった、だってもし見えないのであればあたし達を「悪魔」なんて言ったりしないもの!きっと見える人がいるのよ!あたしがムスッとした顔をしていると、
「もし見えていたとしても、俺達が干渉することは出来ないから無視しても構わないと思うよ」
「どういうこと?」
「あれ?説明書読んでないの?人間界にいく場合は、許可が要るんだけどもしいくとしたら絶対に人間と関わってはいけないらしいよ」
「へ?なんで?」
「さぁ……?でも分からないわけでもないな・・・。なんでも人間は弱いらしいから強い者を恐れるらしいね……、俺達と根本的に違うらしい」
「人間って弱いの……?」
なんだかますます良く分からなくなってしまった……。
これから「マテリアルピクター」の研修生として物質界つまり人間界へ行くわけだが、少しだけそこに住む 人間に興味がわいた!弱いのに同族殺しをしたり、強い者を勝手に恐れたり・・・へんな生き物。あたしそう勝手に思っていたけど、実際は違うのだということを後で知ることになる。何でかかわってはいけないのかということも……。
これからいろんなことがあるけど、頑張っていこう!
自分がなりたいと思って選んだ道なのだから……、まだ延長線上だけど……汗。
「よ~し!頑張るぞーーー!!!」
あたしは立ち上がりガッツポーズをとった!
もちろん、兄はびっくりしてたけど。
第1話魔界の少女「完」
1話-9へ
2話「武器屋と講師」-1へ
目次へPR
この記事へのコメント