1話「魔界の少女」
あらすじ
母からお祝いとして案内された場所は、物凄くボロイ『おでん』と書かれた古っちい屋台だった。てっきりレストランに連れて行ってもらえると思っていたリオンは怒り心頭!
そのおでん屋は警備隊長をしているはずのリオンのおじさんが運営している屋台だった。
9
就職お祝いの席は、ボロッちい屋台だった。
しかも親戚の叔父さんの……。
「ここって、アルフレッド叔父さんの屋台だったの……?」
このボロッちい屋台は、母の叔父さんがやっている屋台だったのだ……。
確かフロッセンス地区の警備部長していたはず……。
何故屋台・・・?頭に鉢巻なんかして、しかも妙に似合っているんですけど……。
あたしが怪訝そうな顔をしてるとアルフレッド叔父さんが、
「なんだ?俺が何で屋台なんかしているのかって?あはははははっ!!!」
叔父さんは豪快に笑うと、話してくれた。
ちなみに屋台は、「おでん屋」だ……。
なんで、おでんなの……、おでんて確か人間達が作った料理よね……?教科書で見たことあるけど実物は 初めて見たかも。興味しんしんでおでんを眺めながら叔父さんの話を聞いた。
「最近、魔物が増え始めて警備の仕事も厳しくなってな……、俺もつい最近まではそこで頑張っていたんだがちょっと体を壊してしまってな……」
真剣そうな顔そう言いながら、叔父さんはお酒を空のグラスに注ぐとそれを母に手渡した。
母はおいしそうにお酒を飲んでいる。何か頬が赤い、酔っ払っていない?
「えっ、叔父さん体壊しの!?」
おでんを眺めていたあたしは驚いた!
だって、竜族が負傷するなんてありえない!強靭な体と強力な魔力を持つ竜が負傷なんて聞いたことがないからだ。説明していなかったけど、叔父さんは竜族だ。なんていうか爬虫類みたいな格好で中途半端な状態だけど、本来はあたし達みたいに人型の姿をしているはず……。横に座っている兄もびっくりしている。
「で、傷を治すために今はこんな状態だ」
「竜族が傷つくって相当厄介な相手だったの……?」
あたしがまだ信じられないと思ってみていたら、母が酔っ払った口調で
「叔父さん、うそつくのはダメよ~」
「えっ!?」
ちょっとした沈黙…………。
え~と、今のはうそ?何でしょうか……?
あたし達の目が点状態になっていると、母が
「叔父さんは、ちょっとした病気なの~」
「びょ、病気……?」
「そ、病気。しかもすぐ治る病気~」
「え~と、病気って……?」
あたしが叔父さんを見ると、叔父さんは口笛を吹いてそっぽを向いている……、おいっ!
よく考えれば、この叔父さんはよく嘘をつくだった!
そういえば、子供のころから良くだまされてたのを思い出した!
「く~、何よ心配して損した!病気なら全然心配することないじゃん!!」
抵抗力の高い竜族にとって病気はたいしたことないのだ。1、2日寝てるかじっとしてればすぐに回復してしまうのだ。薬すら必要ない。しかも聞けば叔父さんはただの風邪!
「ん?じゃ、なんで屋台なんかしてるの・・・?」
ん?この屋台か?これは俺の友達の屋台なんだ。風邪引いて寝込んだんで俺が変わりにやっているんだ。」
風邪引いたやつが、風邪引いたやつの面倒を見ているのかい?なんでも休みで退屈だったから手伝うことにしたんだとか、自分も風邪引いているくせに・・・
何考えているのか……???
「俺っていいやつだろう!?」
叔父さんは自慢げに言うのだった……。
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