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病院を退院してすぐ次の日の戦闘練習基礎訓練はリオン一人ランニング、そのほかの研修生は武器の扱い方を教わっていた。もちろん、皆それそれ自分にあった物を持ってきているのだから扱い方もそれぞれ違う。
リオンはというと、施設内の隅っこでランニングをしながら皆が武器の訓練をしている様子を疲れた顔で見ているしかなかった。
「なんで、こうなるのかな?」
なんであたしランニングしてるの?ああ、そうか……、ランニングした事忘れたんだっけ?ていうか、何でそんなこと忘れるの~?うううっ、しかも体が重いし……。このブレスレットのせい?そういえば、このブレスレットには人間の肉体の疑似体験が出来るようになっているんだっけ?そ、それにしてもなんだか疲れてきた・・・あろ、どのくらいで終わるの?これ?
「リオン、大丈夫だろうか……?」
リオンがヘロヘロになりながら走っている。リオンは訓練所内の森の中を入っていった。
俺はリオンを見送りながらも、少し心配になった。前のランニングのときは倒れた俺を背負って走ってくれたみたいなのだが結局倒れてしまった。力の強いものにはこのブレスレットはかなりきつい。もしかしたら、また途中で倒れてしまうのではないだろうか?
「アルデル様!」
「うん?何?」
「今は武器の練習の時間ですわよ。よそ見をしてはいけませんわ。」
「ご、ごめん。」
今俺と一緒に訓練しているのは、ペアを組んだイライザという魔女だ。魔道士の家柄でかなりの資産家のお嬢様だ。俺よりも背が高い。すごい自信家で、魔力も高く魔道関係の知識がとても豊富だ。ただちょっと世間知らずなところがある。彼女は綺麗だしスタイルも良いのか、男共からはかなり人気がある。でも何故か他の連中とは話さず、何故かいつも俺に話しかけてくる。正直、どうも彼女は苦手だ。
「まったく、兄妹でこんなに違うとはな。妹は騒がしいのに対して兄貴はこうもおとなしいとはね。こんなやつのどこがいいのか?」
「……」
「ナナオ!」
「ふん!」
俺が余りにおとなしいのかイライザの隣にいる小さな魔女ナナオがふてくされた顔というか納得していないというか、そんな顔をしてそっぽを向いた。イライザのパートナーだ。彼女は代々イライザの家に仕えている魔女だ。ナナオは背の低い俺よりも小さい。彼女は魔力はそれほど強くはないのだけど、非常に冷静でさまざま各分野の知識豊富なので少し暴走しがちなイライザにとってはいいパートナーなのかもしれない。
とはいえ、彼女らと話すのはすごく疲れる。
どうにも人と話すのは苦手だ、すごく緊張する。リオン早くランニング終わって帰ってきて欲しいな……。
「これから模擬練習を始める。皆集合!」
講師のジャンカンが号令をかける。
え~と、リオンは置いてきぼり?俺があせっているとジャンカンが、
「全員集まったな?これからチームを組んでマテリアル採取の模擬練習を行う。何か質問はあるか?」
「せ、先生……」
俺はそ~と恐る恐る手を上げた。
「うん?どうした?アルデル。」
「あ、あの……リオンはどうなるんですか……?」
「ああ、彼女ももちろんランニングが終わったら武器訓練をしてもらうから大丈夫だ。なんだ?そのことが気になったのか?」
「……はい」
俺が弱弱しく言うので、先生がため息を着いた。
「妹は元気過ぎで、兄はおとなしすぎ?本当に性格がま逆だな……」
そういって先生は苦笑いをした。
「……」
うぅぅ……、リオン早く帰ってきてくれ!
第3話「基礎演習」完
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