17
2重結界の中のモンスターは、やはり外で出会ったモンスターとは違い体力も力もあった。
特に赤いモンスターは倒す似が大変だった。
傷を負っても徐々に再生するのだ。その上、攻撃してもその傷口らは液体を出すこともない。
それでもクオンの先制攻撃のおかげもあるし、なんとか5匹のブヨブヨモンスターをあたし達は倒すことが出来た。
『倒すのに、ずいぶん時間かかったね…』
『そうか?』
息を切らして言うあたしに対して、フィフロスがケロッとした顔で言う。
うちらはあんたとは違う!あんたは戦いを楽しんでいただけでしょう?
その様子を見ていた、クオン達も呆れている。
『あんたは、ただ戦いたいだけでしょう?まったく…』
あたしがフィフロスに向かってちょっと睨み返すと、
『まだ先はあるし、油断は禁物だ。少し休んでから次のフロアに行こう』
と、額の汗を脱ぐながら兄のアルデルが言う。
『そうね。やはり中のモンスターはかなり強かったし、油断はできないわね』
ユーディリーも兄の意見に賛成する。
確かに、中のモンスターは外の連中よりもタフだった。
外の連中と違って、この中の連中は個体差もあるのだろうけど再生能力を持っているものがいたのだ。お陰で倒すのにかなり時間がかかってしまった。再生能力があったモンスターは赤い色をしている奴だった。ちなみ、フィフロスが倒したのは、再生能力がない外にもいる通常の青いモンスターの方だったけど。
『どのくらい休む?あんまり時間を取りたくないのだけど…』
あたしがそう言うと、ユーディリーが少し考えこんでから意見を言った。
『そうね。皆結構疲れているから10分くらい休憩して、体調が戻ったら次のフロアへ行きましょう』
『それはいいけどさ、ここで休むのか?もう少し先に行ってから休んでもいいんじゃないのか?それにこんな所で休んで、またさっきのモンスターが出現するかもしれないし…』
ユーディリーの意見に対してクオンが尋ねた。
確かにここで休むのはちょっとアブナイかも…。
フロアとフロアをつなぐ通路で休んだほうがいいのかもしれない。この先何が起きるのか分からないし。
『フロアとフロアの間にある通路で休んだらいいんじゃにない?』
あたしは、そう進言してみた。
『そうだな、通路の所で休もうか』
クオンをあたしの提案に賛成してくれた。
そんな訳で、あたし達は今いるフロアから次に続くフロアへの通路の間で休むことにした。
『通路で休んで大丈夫なのか?』
フィフロスが心配そうに言う。
『フロアで休むよりはマシだと思うけど?』
クオンがそう言う。確かに、ついさっきまでモンスターがいたフロアで休憩するのはちょっと気が進まない。それに通路でモンスターに遭遇したことはまだ一度もない。一度もないというのもちょっと不安だけど、たぶんここを作った精霊はそんな事はしないだろう。たぶん………。
『でもあの赤いモンスター、新種だよね?たぶん…』
クラウンが遠慮がちに言う。
『赤いモンスターか………。確かに新種かもね。急速に進化しているということなのか、もしくはエネルギーが溜まって本来の力に戻ってきたのか…。色々推測はあるけど、今はなんとも言えないな~。とりあえず、今の状況を先生に報告したほうがいいんじゃないのかな?』
『報告………、そうか!兄貴、報告、報告!』
クオンが先生に報告したほうがいいと提案したので、あたしはすぐに兄貴に向かって先生に通信をするように促した。
『わ、分かったよ』
そう言うと、兄貴は懐から手帳型PCを取り出して早速先生に連絡をするのだった。
「なるほど、再生能力を持つ赤い新種のモンスターですか……」
先生が画面上で唸った。
『先生はどう思いますか?』
兄のアルデルが先生に訊いてみた。
「そうですね………。もしかしたら、その新種は新しく作られたものかもしれないですね」
『新しく作られたモンスター?』
皆が一瞬ハモった。
みんなビックリ……。
そりゃそうだ、こんな短期間に新しいモンスターを作るなんて!
「今までのモンスターとは違う能力を持っているということは、外見は似ているがまったく違う生き物を作ったと考えるのが正しいかもしれません」
『待って!?それってどこかで魔力を大量に消費しているって事!?』
「……。そうなりますね……」
先生が沈黙した。
それは憶測ではなく明らかに二人の魔力を使って、モンスターを作り出していると言う事だった。
8話-16へ
続く
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