マテリアルピクター7話「妖精と精霊」19
あらすじ
目的の場所に着いたのはいいが、今度は連絡がとれなくなってしまったリオン達。
連絡不能なまま時間が過ぎてしまい、センターではちょっとした騒ぎになっているのだった。
※7話はこれで終わりです。
2月中に何とか終わってよかった^^;
19
あたし達と連絡が取れなくなってから3日目。
講師の先生とマテリアルピクターの支部長らは、通信が取れなくなったという騒ぎが起きていた。
会議室で職員達が言い合いをしていた。
「研修生と連絡が取れなくなったというのは本当か!?」
「そうみたいですね」
「何を冷静に言っているんだ!!」
「そうは言っても連絡の取り様がないので……」
「たぶん、マテリアルの近くまで来ているのだと思います」
「そうなのか?」
「ええ、たぶん。研修生の使っている通信機能はそれほど強力な物ではないので、ちょっと強めの魔力の高い場所に行くと通信が出来なくなるのです。この訓練施設ではそんな魔力の濃度が濃い場所などないので、普段なら問題なく使用できるのですが今回はやはり普通ではない状態なので通信が不能になってしまったのだと思います」
リオン達を受け持っている講師フロンが説明する。
それを聞いていた職員達も黙った。
確かに研修生の持っている通信機はそんなに優れた代物ではない。人間界で言うところの『無線』みたいな物にちょっと『携帯電話』の通話やメール機能がついた様な代物である。マテリアルピクターとして認定されるときちんとした通信機能などが備わった物がもらえる様になる。リオン達は半人前なので機能も低い物しか支給されていない。
「とりあえず、緊急である事には変わらない。もしものときは我々が救出しに行こう」
「え!?」
フロンは少しビックリした。
いつもガヤガヤとうるさく言う職員達が、『自分達が救出しに行く』と言い出したのだ。
「後3日経っても連絡がない場合は、我々が救出に向かう。支部長それでいいですね?」
「……仕方ない。分かりました。フロン先生もいいですね?」
マテリアルセンター支部長のオデリックがフロンに向かってそう言った。
「はい、分かりました」
会議が終わって支部長のオデリックと講師フロン、ジャンカンが残った。
「急に態度が変わってビックリしただろう?」
オデリックがフロンとジャンカンに向かってそう言った。
あたりは夕暮れ時、室内にも夕日が入ってきている。魔界の夕日は少し変わっているが。
「急に自分達で助けに行くなんて初めて聞きましたよ。今までは、他の誰かにやらせようとか言っていたのに……」
会議の様子を見ていたジャンカンが不思議そうに言った。
「例の正体不明の研修生の事ですね?」
フロンがオデリックに訊いた。
「ふむ」
「ひょっとしたら何か関係があるとお考えなのでは?」
「ない事はない、あると言えばあるかもしれない。つまり『確認してみたい』そう言う事だよ」
「どういう事です?」
2人の会話を聞いていたジャンカンが不思議そうに訊いてきた。
「ひょっとしたらこの騒ぎは、他の階層の連中が引き起こしているのではないかと考えているんだよ」
「な、何だって!?」
「マテリアルピクターの数を減らすのが目的なんじゃないかと考えているんだ。数を減らすには研修生の数を減らせばいい。で、今回この訓練場を狙ったという事かもしれないと皆は考えているだ」
そうフロンは答えた。
「そ、それは法律違反じゃないか!!」
「確かに違反だが証拠がない。確証もない。だから皆現場を見に行きたいと思ったんだ」
「だったら、とっとと見に行けばいいだろう?」
「そうは行かないんだよ……、条例でね。『訓練施設は講師と研修生、そして正規のマテリアルピクター以外の使用は禁止しているんだよ。事務職員は原則立ち入り禁止。利用制限があるんだ。しかも訓練施設内での緊急は1週間以上の場合に限る。』というものだ」
ジャンカンはボー然となった。
「な、なんだそれ!?そんな条例初めて知ったぞ!?しかも緊急事態の発生条件が1週間以上って……、どういう事なんだ??」
そのへんな条例に、ジャンカンが疑問に思うのも当然である。
「それがつい最近出来たんだよ。それも変だろう?この条例は先月出来たんだよ」
「それじゃ、1週間何もできないって事か?」
「まぁ、そう言う事だね……」
「信じられない……」
「だから皆どうしようかと焦っているんだよ。で、今回職員の人がまさか救出に行くというのでちょっとビックリしたのさ。職員は救出作業が制限されているからね」
ジャンカンはまだ信じられなかった。そんな理由があったなんて、しかも1週間救出不能とは!
職員達も初めて知って慌てたのだろう。だからあんなよく分からない慌てぶりをしたのかもしれない。
「なんて不利な条例なんだ……、でも待てよ。相手も同じ条件って事だろう?相手にとってもあまり良い事ではないんじゃないのか?」
「どうだろうね……」
フロンはジャンカンの問いに対してあいまいな返事をした。
ジャンカンはフロンを見て、まだなにか隠しているんじゃないかと少し疑問に思った。
あたし達は、まさかこんな事態になっているなんて全然知らなかったのだった。
第7話「妖精と精霊」完
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