マテリアルピクター7話「妖精と精霊」18
あらすじ
どうやらこの奇妙な魔物は、水のマテリアルがどこからか魔力を得て勝手にモンスターを作られているらしいと推測するリオン達。
その魔力とは、やはり捕まっている二人からのものなのか?
もしそれが本当だとしたら?
そんな不安にかられながら、先に進むと目的の場所へとたどり着いたのだった。
18
「な、何ここ?」
すっかり気を取り直して、元気になったあたし。
なんとか滝のある場所へとたどり着いたのだけど……。
眼の前に謎の巨大な渦が見える。
「うむ、しいて言うなら『渦の門』ていうやつかな?」
などとクオンが目の前の状況を見てそう説明?した。
「いや、そうじゃなくて!これはどういう事なのか?を聞いているの!」
正確に言うのであれば、そこには濃度の濃い水の塊があった。しかもその水の中心には大きな渦が渦巻いている。
「昨日はあんなに泣いていたのに、もうケロッとしているんだな。」
「まぁ、元気なのが取り柄というか何と言うか・・・。」
あたしとクオンのやり取りを聞いていたフィフロスは、その様子を見ながら兄のアルデルにそう言った。
ふ~だ、どうせ元気だけが取り柄ですよ!
「これは、2重結界ってやつね」
ユーディリーがあたし達の目の前にある濃度の濃い水の渦を見て言った。
そう、ここはイライザとナナオが水のマテリアルに閉じ込められた場所なのだ。しかもその場所は妙な水の結界に覆われていたのだった!
今あたし達がいる結界も水の結界なのだけど、ここは完全に別。前に来たときとは風景も全然違う。回りは海草だらけ。滝のある場所にはまるで水の底を思わせるような巨大な渦のような結界が張られていた。
「これは海の水かしら?」
ユーディリーが結界を観察しながら言う。
「海?」
「水のマテリアルといっても属性は『海』だからね。その本質がこの結果だろうな」
とクオンが付け足す。
「結構頑丈な結界みたいだな。この中に入らないと、二人を助けることはできそうもないな」
「そ、そんな!それは困る!もし魔力がなくなったら2人とも死んじゃう!!」
「そうだな、何とかして中に入ろう」
そう言ってクオンは結界を調べ始めた。
あたしわ焦った。
魔人族は魔力が生命力の源だ。魔力がなくなった場合、多くの魔族は霊体と魂が分離し魔界からいなくなる。つまりそれが魔族の死だ。残された霊体は『アストラルボディ』と呼ばれ1週間もすると霊子物質となって世界に散らばり消滅する。ようは死ねば消滅してしまうのだ。
「結構強力だな。この前みたいに同調して入る事はできないのか?」
兄のアルデルは初めて見る水系の強力な結界を見ながら、クオンに尋ねてみた。
「う~ん、この結果はマテリアルではなく『水の精霊』自身が生み出したの物だと思うんだ。だから入るには精霊の許可が必要なんだけど……」
「なんだけど?」
「俺たちはほら、『招かざる客』というやつで……」
「だから何なの?」
あたしもクオンに訊いてみる。
「つまり強引に中に入るしかないって事」
「なんだ、そんな事か~」
やはり今回はクオンにもよく分からないらしい。
「そうだ、先生に聞いてみよう。」
あたしは身分証明証に着いている通信機能を使って先生に連絡しようとした。
「――あれ?」
「どうしたの?リオン?」
兄のアルデルが覗き込んできた。
「うん、ちょっと待ってね」
そう兄貴に言ったが、いくら連絡しようとしても通信できない。
「お、おかしいな……?あれ??」
焦るあたしに、
「ひょっとして通信できないのか?」
慌てるあたしに向かって、クオンが訊いてきた。
「う~、なんか連絡できない……」
あたしが困った顔をするとクオンが自分でも通信をしてみると言って、証明証を取り出し連絡を入れてみた。
ピッピッと虚しい音がする……。
「どうやら俺のもダメみたいだな。もしかしたら目的地に近づくにつれ、通信不能になっていたのかもしれないな」
「え~!?入り口付近では通じたのに……、どうするのこれから?」
「まぁ、しょうがないんじゃないのか?このまま救出を実行するしかないだろう? 向こうの先生方はたぶん大慌てだろうと思うけど」
確かに向こうは大慌てだろう。何せ連絡できないのだから。
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