マテリアルピクター7話「妖精と精霊」13
あらすじ
センターで講師の先生たちが会議を開いている頃、リオン達は水の森の中で奇妙な生き物と遭遇していた。リオン達魔族とは違うそれはいわゆる「モンスター」と言われる物なのだが、魔界ではよくいる生き物であり危害を加える物がほとんどなのでよく退治されるのだけど…。
でもここに居るモンスターはちょっと違っていた。
13
あたし達は今ちょっとした事件に巻き込まれていた。
「し、動いちゃダメ!」
ユーディリーが小さく言う。
みんなも物陰に隠れてじっとしている。
「何であんなのがこんな所にうろついているの……?」
「――分からないわ」
クラウンが不安そうな顔をして言い、かわいい猫耳もしょんとたれている。クラウンのその問いにユーディリーも厳しい表情でそう言った。あたしもなんであんな者がうろついているのか分からない。
「倒したほうがいいんじゃね?」
茂みに隠れているフィフロスがイライラした顔で言う。
「それはまずいだろう?余計な体力なんて使いたくないよ」
クオンが嫌そうな顔をして小さな声で文句を言う。
今あたし達は、魔物……。つまりモンスターから身を守るために隠れているのである。何でそうなったのかと言うと、話すとちょっと1時間前に戻るかもしれない。
休憩してお昼と摂っているあたし達。
もちろん、そのお昼は今朝採って来た木の実なんだけど。その木の実は、フィフロスが獲って来た兎の皮で出来た袋に入っていたんだけどね。ちなみにその皮には、牙の後がくっきりと残っているんだけど……汗。
なんか凄い罪悪感があたしの中にあったりして。
まぁ、気にせず食事を済ませ休憩もとったしそろそろ出発しようかと話していた時だった。
「みんな静に!!」
突然、ユーディリーが声を掛ける。その声とともにみんなの動きも止まる。
「……どうしたの?」
あたしがビックリして話を聞こうとすると、
「なんかいるみたいだな……」
「そうみたいね……」
と、フィフロスとクラウンが警戒し始める。よく見ると彼らの耳がピクピクとあたりの音を聞き取る様なしぐさをしている。
「みんなこっちに隠れましょう!どうやら近くに魔物がいるみたい」
「まぁ、魔物!?」
訳も分からず、ユーディリー達に促されてあたし達は岩陰に隠れるのだった。
「魔物が近づいているってどういう……、モグモグ……!!?」
あたしが大きな声を出そうとしたらユーディリーに口を押さえ込まれた!彼女の後ろにはケット・シーのクラウンもいる。
「大きな声を出しちゃダメ!魔物に気づかれる!」
「!!!」
小声でユーディリーに怒られてしまった。
見ると半透明の不気味なジェルの姿をした魔物が1匹、2匹、3匹……。いや、よく見たら5匹うろついているではないか!!
外見は水魔族のスライムに似ているけど彼らは通常、人間みたいな姿をとって生活している。でもこいつらは水の化け物その物、体格も大きい2メートル位だろうか?それに不気味な核と呼ばれる丸い心臓部分に当たる所がドクドク波打って動いている。核が動くたびに周りのジェルがボコボコと気泡を上げている。こいつらが居た場所はまるで酸がまかれたみたいにその部分だけが解けているようだ。
「!?」
「――大きな声を出してはダメよ」
うんうん!あたしがうなずくと、そう言ってユーディリーはあたしの口から手を放した。
「なんなのあいつ……?」
「――分からない。でもこの世界の物ではないのは分かるわ!」
ユーディリーは声を殺しながらそう確信していると言った。
「え!?そんな事分かるの?」
「ええ、オーラを見ればね。」
ユーディリーがそう答える。オーラ……、どっかで聞いたような……?
「お前らも見えるんじゃないのか?竜族なんだし……」
などと草むらに隠れていたクオンが小声で問いかける。クオンの隣にはフィフロスと兄のアルデルも隠れている。ゴブリンの彼は小さいので草むらに隠れて全然姿が見えない。
「まぁ、オーラが見えたとしても波長を捉えて場所を把握できなければ意味ないけどな」
などと余計なことを言うのであった。
そして現在、あたし達の側近くに魔物がうろついている。
この状態が1時間ほど続いている。まだ魔物はこのあたりをうろついているんですけど……、確かにどうにかしたい。
なんかイライラしてくる、こんなところでじっとしているのは性に合わないのだ。フィフロスの言うとおり倒してしまったほうが楽かもしれない。
そう思っていたら、兄がふと
「あのモンスター倒そう……」
と、つぶやくのだった。
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