5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
リオン達を襲ってきた2人組みの研修生。
相方の少女があっさりとやられて逆上した妖鳥族の少年が、リオン達に向かってありったけの魔力を使って巨大な竜巻の魔法で襲い掛かってきた!
魔法が苦手なリオンとは裏腹に冷静に対処する兄のアルデルであった。
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ひぇ~~~ッ!!!
何とかして~~~~!!!
あたしの目の前に巨大竜巻が物凄いスピードで突っ込んでくる。
身を縮めて座り込むあたし。
すると兄貴があたしの前に出て何かを唱え始めた。
手にはセンター指定の武器屋で買ったあの黒い魔道書。
兄の唱える呪文と一緒に魔道書が光を帯び始める。そんな悠長に唱える時間なんてないんじゃないかと言うくらい、切羽詰っていたはずなのにまるでその光景は有限の時間がたくさんあるかのように時がゆっくりと流れていたように見える。
「本来あるべき姿に戻れ、中立調整(クリアニュートラル)」
そして兄が力ある言葉を唱えると、すぐそこまで来ていた竜巻が徐々に小さくそして細くなって最後には消えてしまった!
「――え?……消えちゃった?」
おそるおそる顔をあげてみると、あたしの周りにで渦巻いていた大気の気流は一切ない。
「そ、そんな馬鹿な……!!」
術を放った少年もビックリしている。顔は真っ青だ。
たぶん、渾身の一撃みたいな物だったんだろう。確かにあれは凄かった。
「く、くそ……!!」
そう言うと跪き、息を荒く上げて倒れてしまった。
魔力を使いすぎたのだろう。案外無茶をする人なのかもしれない。
「リオンもこのくらいの魔法は使えたほうがいいよ」
と、兄があたしに言う。
「……」
どうせそんな魔法使えませんよ!
と、思いながらあたしがふとマテリアルの方を見ると、さっきより少しサイズが大きくなったような気がした。
「?」
「リオン、どうしたの?」
兄がいつもどおりの口調と態度で尋ねてくる。
「う~ん、なんかね……。マテリアルが少し大きくなったような気がするんだけど、気のせいかな?」
「マテリアルが大きくなった?」
兄もマテリアルの方を見る。
「もしかして、あたし達の魔力を吸い取ったとか……?そんなわけないか……」
「確かに魔力は吸い取ってはいないと思うけど、さっきの風のエネルギーは吸い取ったかもしれないね。仮に吸収したとしたら結構吸い取ったかもしれないね、サイズが米粒くらいだったのに今は砂利石くらいの大きさになってる」
「え!?」
それってむやみに属性魔法を使うと危ないってことなんじゃ……?
「それはおいといて、どうやってこのマテリアルを採ろうか……」
いや、それはおいて置いてはダメだろう!
「ちょ、ちょっと兄貴!!マテリアルが力を吸い取って急激に大きくなるなんて聞いてないよ!」
「まぁ、確かに急激に大きくなるとは聞いていないけど、実際にどうなるのかなんて現場に言って見たいと分からないこともいろいろあると思うんだ。だからこういう実践訓練があるんじゃないか」
「そ、それはそうだけど……」
でもなんだか納得できないあたし。
「そ、それとあの2人はどうするの?」
隣の廃墟ビルで気絶している妖鳥族の2人組みを指差した。
「……、まぁ応答がなかったら先生が助けに来てくれるんじゃないの?」
と、しばらく2人組みをじーと見ていた兄は案外薄情な意見を言うのだった。
そっか、あの2人は放って置くのか……。
「リオンは助けたいの?」
「へ?いや、どうしようかな……と思って。」突然聞かれてちょっと困った。あたしもどうすればいいのかよく分からない。
「それじゃ、このマテリアルを採ったら考えよう」
まぁ、しょうがないか……。今は他にどうしようもないので、マテリアル採取をすることにした。
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