5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
妖鳥族の研修生に襲われたリオンと兄のアルデル。
が、襲い掛かったはずの妖鳥族の2人はアルデルの反撃を受けて逆にピンチに?
リオンは兄には絶対逆らわないでおこうと、心に決めるのでした。
9
魔界では昔からよく伝わる教訓めいた言葉がある。
『命が惜しくば竜には近づくな、しかし勇気あるものが近づけば竜は見逃してくれるだろう』
初めはのこ意味がさっぱり分からなかった。まぁ今もよく分からないけど。
でも今目の前で見る光景は、その一歩手前みたいな感じがしてならない。自分の種族がどんな風に言われているのかなんとなく分かった様な気がした。
あたしもいつか、あんな風になるのか……?
とりあえず、兄を怒らせるようなことはしないでおこう。うん。
「レッカ!!」
殴られて落下する妖鳥族の少女を助けようと、パートナーの少年が助けに行く。
どうやらなんとかキャッチして別の廃墟の建物に飛び移った。でも手に抱えている少女はぐったりしていてまったく動かない。
「うわ~……」
哀れとしか言いようがない。
たぶん殴られて気絶したんだろう。兄のアルデルは本気で殴ったわけではないのだろうとけど……、お気の毒である。あたしは少し申し訳なさそうな顔をしたが、これは訓練なんだからしょうがないと思い兄貴に向き直った。
「もうちょっと手加減してもいいんじゃないの?」
「ん?俺はちゃんと手加減したよ?」
兄は不思議そうに首をかしげる。
瞳に宿った魔力の波動はなくなっているようだ。
それにしても成体になると瞬間移動が出来るようになるのか……。
ちょっと羨ましい。
う~ん、するとあたしはいつになったら成体になれるんだろう……?
などと思っていたら、気を失っている妖鳥族の少女の傍らで少年が叫んだ。
「お、お前ら!!よくもやってくれたな!!許さないぞ!!こうしてやるーーー!!」
そう言うと、少年は何かの呪文を唱えると周りの空気が振動し始めた。
「な、何!?何が起きているの?」
「気流操作の魔法か!?」
「気流操作?何それ??」
「大気を操る風の魔法だよ。そんなことも覚えてないの・・・?」
うっ・・・!だ、だから魔法は苦手なんだってば・・・!
そんなことをしている間に少年の呪文は完成したらしく・・・
「マテリアルごとぶっ壊してやる!!」
などとほざきやがった!!
「ちょ、ちょっとそんなことしたらポイント入らないじゃない!」
「入らないようにしているんだろうね~」
などと兄のアルデルがのん気なことを言う。
周りに物凄い風が発生し始めしかもすれが次第に渦を巻き始めた!もしかして竜巻が出来上がろうとしているのでは!?しかも巨大竜巻!!
「結構大きいサイズだ、確かにこれだとマテリアルもここら辺の建物も壊れそうだね……」
何をのん気に言っているの!?しかも相手が作り出している風の渦を眺めながら悠長なセリフを言うな!!
ああああっ!どうすりゃいいの!!?
隣では兄貴がひたすら風の渦を眺めている。
「吹き飛びやがれ!!!風列刃竜(ブレイド・トルネード)!!!」
少年の口から力ある言葉が発せられた!
それと主に巨大な風の渦が徐々に形を持ち始める。逃げる暇なんてない!
慌てふためくあたし。
完成した竜巻はそのままあたし達とマテリアルに向かった襲い掛かったのだった!!
5話-8へ
5話-10へ
目次へPR
この記事へのコメント