3話「基礎演習」
あらすじ
気がついた底場所は病院だった!
どうやらマラソンの途中で倒れたらしいのだが・・・、リオンにはマラソンをした記憶がなく?
もしや、まさかの再度マラソンをやる羽目に!!

13
「――ランニング?」
「そう、ランニング」
病室に一瞬沈黙が訪れた。
――ランニング、……ランニング?はて、そんなのしたっけ?
何かつらいことをしたような記憶はある。
あたしはしばらく考えた。う~と、考えた!
「あたし、ランニングなんてしたっけ?」
「ほ、本当に覚えていないのか!?」
「えへへへっ、覚えてない。ていうか、ランニングなんていつやったの?」
ナナオはあきれ返った。だって、本当に覚えてないんだもん。
「リオンは、つらい事とか楽しくないことは覚えないんだ。幸せな性格だよね~」
兄のアルデルがリオンに向かってにっこり笑っていう。
「そ、それは誉めるところじゃない!ていうか、かなり致命的だと思うぞ!それって!!」
ナナオはさらにビックリした。ナナオの思考に『なんなんだこの兄妹・・・。ていうか、アホか?』と言う考えがよぎるのだった。
「そうですか……。リオンさんは、ランニングをした事を覚えていないのですね?」
今まで黙っていたフロン先生が突然言った。
「え?」
「退院したら、リオンさんだけもう一度ランニングしてくださいね」
と、先生はニッコリと笑って言った。
「……はい?」
「もう一度、基礎練習のランニングを受けてください。もちろん、訓練所を1周するんですよ」
「へ?」
「2度は言いませんよ」
と、先生。
「今ランニングの訓練をしろと……、言いました?しかも訓練所1周って……」
「言いましたよ?」
「ちょ、ちょっと!せ、先生どういうことなんですか!?」
「いいですか?リオンさんだけ、ランニングの記憶がないのですよ?これは致命的です。覚えていないということは、魂が学習していないといっているのと同じ。ランニングで覚えるはずだった事がすっかり忘れてしまっているのですよ?これは大変なことです。なのでリオンさん、退院したらランニングやりましょうね?」
が~~~ん!!!
なんと1人だけランニングしないといけないという事実!あたしは兄貴に救いを求めようと振り合えると先生が、
「アルデルさんはきちんとランニングの記憶があるので、走らなくてもいいです」
「な、何故!?」
「君達はちょっと特殊で、ランニングはあの1日で十分いろんなことを体で覚えるはずだったのですけど、リオンさんだけ忘れてしまったのでもう1回ということになりますね」
「え~~~、あ、兄貴は何か覚えたの???」
すると兄貴が、
「う~ん、なんとなくだけど体が覚えたような気がするんだ。こういうのって本能で覚えるみたい」
「ほ、本能……?わ、訳分からん!!?」
あたしは頭を抱えた。
きっとあたしの種族のことなのだろう。あたしはまだ兄貴と違って未熟なので本能がどういうことなのかまだ分からなかったのだけど、それはおいおい分かるようになる事なので今は保留~。それにしても双子なのに、成長の度合いがこうも違うとは情けない。なんだかお父さんに怒られそうな気がしてきた。
なんてこった、あたしだけ1人この訓練場の周りをランニングしないといけなくなってしまった!
は~、なんか嫌だな~。
結局ランニングをした記憶がないリオン1人だけが、もう一回ランニングの講習をする羽目になったのだった。
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