3話「基礎演習」
あらすじ
マラソンから帰ってこないリオン達を探す事になったイライザ達。
探査魔法で2人を探す事になった。
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すっかりあたりは暗い夜の景色になっていた。
魔界の夜の空は、我々が住む人間の世界と大して変わらない空だった。ただ浮かんでいる星々が若干違うというだけで……そう、ここは戦闘訓練施設の中なのだ。つまり浮かんでいる星々は映像ということになる。たが、今の時間帯はまぎれもなく夜である。
その上空には箒の乗った2人の人影が在った。
箒の先端には、かわいらしい花の形をしたランタンがぶら下がっている。
ランタンはぶら下がっているにゆれる気配がない、その上照らし出す光はかなり明るい。周囲の風景がよく見える、魔力で強くしているのだろう。
そこには2人の魔女が箒に乗って地上を見下ろしていた。イライザとナナオである。
「あの2人どこにいるのかしら……?」
「イライザ様、探査魔法を使ってみてはどうでしょう?」
「そうね、こうも暗いとどこに何があるのか分からないわね。それにしても、なんでここまで自然と同じ環境にする必要があるのかしら?普通なら照明があってもいいのに、それすらもないなんて!」
イライザが不満そうに言うと、ナナオがこういった。
「たぶん、マテリアル研究や実施訓練の練習場としても使われているのではないのでしょうか?屋外にある練習場だけでは足りないからだと思うのです。もともとマテリアルセンターはマテリアル研究とエネルギー変換を行う施設です。それにこの訓練施設内部は、マテリアルがもたらす超常現象や超自然現象を見るために作られたと聞いています。外に被害が出ないようにこのような施設を作ったというほうが正しいかと思います。」
魔力の低い家系の魔女は知識を蓄える方法を身につけることが多い、ナナオはここに入る前にいろいろとセンターについて調べてきたようだった。
「それじゃ、なに?ここは普段研究施設として使われているわけ?」
「はい、研修生がいない時期は研究施設になっていると聞きました。施設の中には、研究中のものもたまに設置してあるとも聞きましたが……」
「ちょっと!それって危ないじゃない!」
イライザはびっくりした、研究物がこの施設の中にあるなんて聞いていない。普通は講師が研究生に注意するものだろう?もしくは研究物を撤去するか、結界で封じていると教える物だ。
するとナナオは、
「研究生が使う範囲は限られているし、そこへ行くこともないので教えていないのだと思います。それにたぶん、結界も張ってあると思いますし・・・」
「な、なんか納得しないわね……。ここって何かあるんじゃないの?とはいえ、今はそんなこと言っていつ暇はないわね。二人を探しましょう」
イライザは少し考えたが、今は帰ってこないリオンとアルデルを探すことにした。
イライザは首にかけていたペンダントトップを取り外した。小さなペンダントトップはとてもシンプルなつくりで銀細工が施したフレームに涙型の青い宝石が取り付けられている。そこに念を込めて魔力を流すと一振りの杖に変わった。その杖は全体が銀で出来ていて、杖の先端には青い宝石がはめ込まれている。まるで巨大な鍵を思わせるような形の杖だった。
イライザが小さくつぶやくと彼らの足元、正確には乗っている箒の下に青白い魔法陣が出現した。そしてイライザが最後の力ある言葉を唱えると魔方陣は居場所を示すかのようにある一転に光を点灯させ、さらに円陣の中心には映像が映し出された。
「な、何が起きたの!?」
イライザとナナオを映像を見て驚いた。
そこには真っ青な顔をして地面に倒れている、リオンとアルデルが写し出されていた。
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