マテリアルピクター8話「水中回廊」14
あらすじ
先を進につれ狭くなる通路とフロア。
さすがにモンスターを避けていくことは難しいと判断。
此処から先は戦うしかないと、各々武器を取り出すのだった。
14
結局アルデルとクオンの立てた攻略法を使って移動する事になったあたし達。
今まで広かったフロアが狭くなってきたため、モンスターにも見つかりやすくなってきてしまった。
何とか8個目のフロアへと移動したのだが、フロアとフロアを繋ぐ通路も狭くなり横幅2人分くらいしかない。先生の予想ではフロアは大小あわせて全部で10個くらいだろうと教えてくれた。連絡の途中、センターの支部長やジャンカン先生、それにマテリアルセンターの職員の人が通信に出てきてビックリした。
皆どうやら心配してくれていたみたいで(まぁ普通心配するだろうな~とは思った)、いろいろ情報交換とかもしてくれた。
それからあたし達の両親に帰って来れない理由について連絡を取ろうとしたらしいのだが、家の電話に出てきたのが黒竜の範空だったためちょっと慌てたそうだ。何で慌てたのかは分からないけど、家には両親は長期不在のため範空に教えてそうだ。まぁ、いつも連絡のやり取りをしているのは範空だから問題ないけど。
みんなの家にも同じ事を伝えたようで、承諾を得てきたそうだ。承諾?どういう承諾なんだろう?なんだかまだよく分からないが、いろいろやっているみたい。
残りも後2つのフロアだけだという事をフロン先生に伝えると、兄のアルデルは通信を切った。
ただおかしな点を言うのであれば、職員と他の講師の先生は何故かマテリアルがふたりを吸収した話をしなかった事だ。
フロン先生もそのことは一言も言わなかった。何故だろう?
『ここから先はたぶん、逃げる事はできないと思うんだ。だからこれからは戦う準備をしたほうがいいと思う。』
兄のアルデルがそう提案する。
『そうね。フロアも狭くなってきているし、逃げ切るって事は不可能かもしれないわね』
ユーディリーも兄の意見に賛成する。
そっか、もう逃げ切る作戦は無理なのか。
ここは覚悟を決めて切り抜けるしかないね!
あたしは、静に目をつぶって大きく息を吐く。
『よし!ここは覚悟を決めて前に進むしかないね!』
『そうだな、戦う覚悟を決めていくしかな!』
クオンも自分専用の武器を取り出した。そういえばクオンの武器を見た事がなかったっけ。
クオンはポケットから自分の武器を出す。
最初はコンパクトに小さく収納されていたそれは、淡い光を放って徐々に大きくなっていった。
クオンの武器、それは巨大な銀のスプーンだった。
――スプーン?
……え?スプーン??杖じゃなくて、スプーン!?
『ちょ、何それ!?それってもしかしてスプーン??まさか、あんたの武器ってスプーン!?』
あたしは、突っ込んでしまった!だってスプーンだよ!?
『ん?何だよ、スプーンの何がいけないんだよ?』
クオンは怪訝な顔をしてあたしを見る。
『いや、だって、スプーンだし…』
『ふっ、これはな家に代々伝わる魔法のスプーンなんだぜ?まぁ正確に言うならスプーンの形をした銀のロッドだけどな』
クオンは自慢げに言った。
スプーンの形をした杖だという。なんだ、やっぱり杖なのか。
でもなんでスプーンなんだ?
そして思わず言ってしまうあたし。
『なんだ、それ杖なんだ……。でもなんで、スプーンの形をしているの??』
『これはな、【合成の杖】って言うんだ。異なる属性を混ぜ合わせる事で、別の物質や即席の魔法にしてしまう魔法の杖なんだ。スプーンのような形をしているのは、力を混ぜるために出来ているんだ』
『へ~』
【合成の杖】か。なんか面白そうな物を持っているのね。
クオンは自分より大きいスプーンを自慢げに掲げるのだった。
スプーンを見つめてみると、薄っすらとだが白く光る物がスプーンの纏わりついている。もしかしてこれが魔力の波動なんだろうか?
『この白い光って、魔力?』
あたしは何気に訊いてみた。
するとクオンがビックリしたように訊いてきた。
『お前、このスプーンの魔力が見えるのか?』
『へっ?皆は見えないの?』
あたしが不思議そうに首をかしげる。あたしは小さい事からたまにこう言ったものが見えていた。
まぁ、見えたとしても誰かに教えた事はないのだけど。
クオンが何か納得し方のようにあたしに重要な事を教えてくれた。
『そうか!お前は魔力が見えるのか!へ~、兄妹でそれぞれ違う物が見えるのか。お前それは凄い能力だぞ!普通は感じる程度で終わる場合がほとんどで、魔力そのものを見る事はできないんだ。特別な呪文でも唱えないと使用できないんだ。お前の魔力を見る能力それはな【センスマジック】って言うんだよ。【センスオーラ】よりも習得が難しい能力なんだ』
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