マテリアルピクター8話「水中回廊」11
あらすじ
水のマテリアルが創りだしたもう一つの結界の中を進むリオン達。
なかなか先に進むことができず悩んでいたが、講師のフロンの助言で魔物のいる方へと進むことにした。
それでも魔物に遭う気配がないと思われていたのだが、何やら怪しい気配を感じ見てみると見覚えのある魔物がいた……。
少々サイズが違うというだけで。
※久しぶりの更新です^^;
色々あってちょっと遅れ気味(`-´;)
11
『――で、でかい』
誰かがそう呟いた。
そう、そいつはとてつもなくでかかった。
身の丈は5メートルを余裕で超えている。その頭部の部分からは無数の触手をウネウネとくねらせ、触手の真ん中だろうか口のような部分から汚い体液をダラダラと流しながらこちらへと進んでくる。体はヌメヌメしていて、半透明のボディをしている。その体の中ではボコボコと気泡が動くたびに現れては消える。こいつが通った後は体液のような物がこびりついている。汚い……。そして変な匂いがする。生臭い匂いだ、なんだろう?薬品の腐った匂い?
一言で言うのなら、悪臭漂う巨大な大ナメクジと言ったところだろうか?汚い上に、気持ち悪い…。
数は………、5匹も居る!
『気持ち悪いよ………』
クラウンが今にも泣きそうな顔をする。あたしだって気持ち悪いですよ。
フィフロスがナメクジモンスターを見て
『見ているだけで吐きそうになるんだけど…』
とか言う。さっきまでモンスターと戦いたいと喚いていたやつが、口元を抑えて『うっ!』とか言ってやがる。さっきまでの元気はどうしたのさ!
『あんなにモンスターと戦いたいって言ってたじゃない、何弱気なこと言っているのよ!』
あたしがフィフロスに言うと本人は
『いや、だって、こんなでかくてしかも臭くて汚いのはちょっと……』
『あ、あんたね……。外のブヨブヨは平気で倒していたでしょう?なんでこいつはダメのわけ??』
などと文句を言っていたら、
『おい、言い合っている場合じゃないぞ!逃げろ!!』
クオンが注意を促す。彼は小さな体の癖に妙にすばやい。
『クオン、待って~!!1人で逃げないで~!!!』
クラウンも彼の後を追った。彼女も何気に早い!やはり猫だから?
『俺達も逃げるぞ!!』
フィフロスに促され、あたしと兄のアルデル、ユーディリーもその場から逃げ出した。
どうやら連中は目が見えない…。というか目がないらしく、あたりをきょろきょろと見回している。触手を使ってあたりをペシペシしているので、あの触手で周りを確認しているようだ。動き自体も鈍そうで、当分の間はどうにかなりそうだ。
あたし達はモンスターの四角になる柱の陰に隠れる事にした。というか、隠れる場所といったら柱だけなのでしょうがない。
『どうするんだよ、これから…。あのモンスター倒すのか?』
クオンが心配そうに言う。
『そうは言っても………、どうしよう?』
あたしもどうすれば良いのか分からない。
『あれも幻かしら?』
ユーディリーもどうしようか考えているようだ。あれも幻だったらある意味困る。実体だったらある程度倒せば数に限りがあるからそれ以上は出てこないと思うけど、もし幻だとすると次から次へとわらわら出てくる可能性が高い。こちらが体力を消耗するだけだ。そんな事考えていると不安いっぱいのクラウンが、
『ねぇねぇ・・・もしかして、あんなのがこれから先いっぱい出てくるって事?』
と皆に疑問を投げかける。
『………』
皆黙ってしまった。そりゃそうだよ。なんていったら良いのか分からない。でもこのままで言い訳でもないし…、そう思っていたら、
『ここに居てもしょうがない、モンスターの居る方へいけばいい訳だし無理に倒す必要はないと思う。もし妨害するような物が居たらその時は皆で全力で倒そう。
大丈夫、何も危険を犯す必要なないんだ。皆で頑張れば何とかなるよ』
アルデルがニッコリ微笑みながら皆にそう言った。
皆感心したかのようにアルデルを見る。
『そ、そうだよね。無理して倒す必要もないし、危険を犯す必要もないよね!皆で協力すれば何とかなるよね?』
兄の意見を聞いて、泣きいそうになっていたクラウンの顔が少し明るくなった。
『なるほどね………、竜族ってこういう種族なんだね。やっぱりちょっと出来が違うのかな?』
クオンが感心している。
『どういう事?』
『さぁ、どういう事なのかな?』
またもニヤついた顔であたしを見る。
う~む、何が違うの??
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