マテリアルピクター8話「水中回廊」5
あらすじ
渦巻き結界の中の迷路の様な通路を進むリオン達。
行けども行けども同じ通路が永遠と続いてく。
あまりに退屈になったのか、「モンスター出ないかな?」などとフィフロスがつぶやく始末。
こんな所でそんなもん出てきてたまるかと文句を言うリオンだった。
5
『どっかでモンスターとか出ないかな~』
壁を【中和】魔法で穴を開けると、新たな通路が広がっていた。
その通路を進んでいくのだけど、フィフロスが物騒な事を口走る。
『お前な、モンスター呼び寄せてどうするんだよ!モンスターなんて出ない方が言いに決まっているだろう?』
『そうよ!モンスター呼び寄せてどうするつもりなのよ!』
と、あたしとクオンが文句を言う。そうだ、呼び寄せてどうする!
まったく、はた迷惑な事しか言わないなこいつは…。
『でもいつもでこの通路続くんだろう?全然先が見えないし、なんだか凄く不安になってくるんだけど…』
クラウンが薄暗い通路を見回しながらそう言った。
確かにどこを見渡しても、一向に変化のない空間をひたすら進むのはさすがに不安をあおる。
しかもただただ時間だけが過ぎていくというのも不安の要素だ。
『それでも油断しないほうがいいわ。何が起きるのか分からないし…、次はこっちのほうに反応があるわ』
ユーディリーがそう言いながら、二人の生命反応がある場所を指し示した。
『ここも壁だね』
指定された場所も壁がある。
兄のアルデルが呪文を唱え、壁に穴を開ける。あたし達は、この行動をず~と繰り返しているのだ。
『なんか、同じ事ばっかりやっていない?』
『しょうがないだろう?他に方法がないんだから…』
あたしがため息を付きつつ文句を言うと、クオンがあたしに向かって指摘する。確かにこれしか方法がないのでしょうがないんだけど、ただただ移動しているだけと言うのも苦痛だ。何か変化があると言いのだけど、そんな変化も全然起きていないのでさらに退屈な状態になっているのだ。
『だってさ、移動ばっかりで退屈なんだもん…』
『はぁ??お、お前・・・何言っているの?昨日は散々騒いでいたのに、今度は退屈なのかよ…』
クオンが呆れていると、
『そうだよな!ここらで1匹くらいモンスターが出てきてもいいよな!?』
『い、いや………。モンスターは要らないんだけど…』
などと、フィフロスが嬉しそうに言う。
はっきり言って、モンスターは要らないです。でて来ない方がいいんです。
すると兄貴が何かを確認する様に、小型の手帳型コンピューターを使って何かを調べていた。
『何しているの?』
『ん?マッピングをしているんだよ』
『マッピング?』
『この空間の地図を作っているんだよ。道に迷っていないかとか、ちゃんと目的の場所に進んでいるのかとか、後はこの空間がどうなっているのかとか、いろいろ調べているんだ』
『随分と高そうな機械を持っているな?どうしたんだそれ?』
クオンが興味津々の顔で、アルデルの手帳型コンピューターを覗き込んだ。
『これは母さんが、マテリアルピクターの研修生になったお祝いに貰ったんだ。最新版の小型PCだって』
『ちょ、ちょっと何それ!?あたしそんなも貰ってないよ!!』
いつの間にお母さんからそんなお祝いの品を貰っているなんて聞いてないよ!!?
あのおでん以降全然そんなお祝いの品なんか貰ってすらいない。
しかも最新版のコンピューターですって!?それって凄く高いんじゃないんですか??
ちなみにこのコンピューターは魔道具の一種、エネルギー源は魔力で動いている。しかもその充電方法は、いろいろあるのだけど一番手っ取り早いのは自分の魔力を注入する事が出来ると言う事。魔力消費なんてす~ごい少ないので、手に持っているだけで充電できてしまうしそのまま使用可能なので半永久的に使えるし、さまざまな呪式(人間界で言うところのプログラムデータやアプリケーションの事)をインストールする事でいろいろな機能が使える凄く便利な代物だ。
しかも魔道具なので壊れる事はほとんどない。
つまり、凄い高価な代物と言う事。
『どういう事なのよ!?』
『え~と…。そ、それは………』
あたしは凄い顔で兄を睨みつける。兄は困った顔でしどろもどろ…。
『これって最新版のコンピューターなんだよな?だったらこれで先生と通信できるんじゃないのか?』
そんなやり取りをしていたあたし達を無視して、最新版の魔道式小型手帳コンピューターを見ていたクオンがそう言うのだった。
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