マテリアルピクター8話「水中回廊」4
あらすじ
渦巻き結界のかなは、正真正銘の水の中。
ユーディリー達に水中呼吸の魔法を掛けてもらいようやく水の中の結界で息ができるようになったリオンは、その中の光景を見て「なんかゲームの世界に入ったみたい」と思ってしまう。
これから面倒くさい探索が続くなんて思ってもいないリオンなのだった。
(最近ちょっと調子悪い^^;)
4
『―――随分と広い場所ね』
ユーディリーがあたりを見渡しながら言う。
『外はそれなりに小さい結界だったのに、中は異常に広そうだな…。すげぇ面倒くさそう…』
クオンは凄くいやそうな顔をして周りを見渡した。
神殿を思わせるような高さ10メートル以上はあろうかと思われる白い柱とそれを囲む青白い壁が永遠と続いている。そして全体的に薄暗い。なんだろうこの感じ……あ、あれだ!人間界で流行っているゲームでダンジョン形式のRPGみたいな感じ。
『なんかRPGのゲームみたいだな。ほら、3Dのダンジョンゲームみたいなやつ』
と、フィフロスが全体を見た感想を述べる。
『なんだよ、ゲームの話かよ』
クオンがあきれた顔をしてフィフロスを見る。
うっ、なんかあたしが思ったことと同じ事言っている。まさか思考回路がこいつと似ているのはちょっと複雑なんですけど…。
何を思ったのか、クオンがニヤついた顔であたしに向かって言う。
『もしかしてゲームみたいだとか思った?』
などと小声で言ってきたのだ!こいつ、あたしをフィフロスと同じ事考えていると思ってやがる!
悔しいが凄く当たっているけど、なんだかムカつく!!
『そんな事、思ってませんよ!!』
『ふ~ん』
あたしが否定すると、クオンはニヤついた顔でユーディリーの所へといった。
『リオン、クオンにからかわれているね…』
兄のアルデルが、複雑そうな顔をしてあたしを見る。
もう、一体何だって言うのよ!!
『ここに居てもしょうがし、先を進みましょう。ここに捕らわれた2人がいるのなら、生命反応があるはずよ。それを探りながら進んでいきましょう』
ユーディリーがそう提案する。もちろん、皆意見はおんなじだ。こんな所でもたもたしている暇はない。
ここも魔力を使って造っているという事は、2人の魔力を利用している可能性が高い。魔力を絶えず消耗しているとしたら大変な事になる!
『それじゃ、進もう。』
兄のアルデルが言うと同時に皆も移動を開始した。
生命反応を探りながらこの不気味な結界の中を通る。反応は鈍いけど、2人はどうやらここに居るらしい。
『それにしても随分と続く通路だな』
フィフロスが面白くなさそうに言う。しょうがない、さっきから同じような通路がず~と続いているのだ。
ちなみにどうやって進んでいるのかと言うと、ここは水の中なので皆泳ぐように移動している。移動魔法で移動速度を上げてもいいのだけど、わずかに反応する生命反応を探しながらの探索では少し役に立たない。もし誤って、生命反応を見失う可能性もあるのだ。こういう作業は慎重にやらないといけない。
するとユーディリーが歩みを止めて、右側の壁に向かって目を閉じて何かを探している。
『どうしたの?』
クラウンがユーディリーに訊いた。
『………』
ユーディリーが集中している。もしかして、2人の反応はこの壁の向こうだとか?
『もしかして、生命反応は壁のほうから感じるの?』
あたしはユーディリーに訊いてみた。
するとユーディリーは目をあけてこう言った。
『どうやらこの向こうに2人が居るみたいなの…』
『おいおい、壁の向こうだぜ?どうやって行くんだ……、もしかして壁を壊すか!?壊すなら手伝うぜ!!』
ユーディリーの言葉を聞いて、何故か嬉しそうにいうフィフロス。
ひょっとして、あんた暴れたいのか?
『壊さなくても例の【中和】魔法で十分じゃないかしら?』
などと、ユーディリーに言われ肩を落とすフィフロス。どうやら暴れたいらしい…。きっと、何にもなくてストレスたまっているのかもしれない。困ったもんだ。
『今は体力を温存したほうがいいと思うよ。外の結界みたいに、いつあのブヨブヨモンスターが現れるか分からないしね。』
『そっか、そうだよな!』
兄のアルデルがそう言うと、途端に元気になったフィフロス。
やっぱり暴れたいのか…。
獣人族は好戦的だと聞いていたけど、本当に戦うのが好きなのね…。
確かにあのブヨブヨモンスターがいつ現れるか分からない、もしかしたら外の連中より強いやつが出てくるかもしれない。そのためには、体力はなるべく温存したい。でもね、フィフロスの戦闘好きには本当に困ったもんだ。行く先々で、こんなやり取りするのかな?
8話-3へ
8話-5へ
目次へPR
この記事へのコメント