マテリアルピクター7話「妖精と精霊」11
あらすじ
クオンとフィフロスが取ってきた朝食を食べ、また移動をするリオン達。
今度はきちんと補助魔法をかけて貰い順調に森の中を進んでいく。
移動の途中、彼らの使う魔法に興味が湧いてきたリオンはクオンに精霊魔法について聞いてみるのだった。
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朝食を終えてまた森の中を歩き出したあたし達。
先頭をユーディリーとクオン、その真ん中をあたしと兄のアルデル、後ろをフィフロスとクラウンと言う隊列で進んでいる。何かあるといけないと言う事で、この隊列で進んでいるのですが……。
目的の滝壺がある場所までは、歩いて3日くらいかかるのだけど昨日クラウンが教えてくれた『早足』の魔法をかけてもらったおかげで物凄い速度であたし達は移動している。この魔法、なんか滑るような感じで足が動いているいるのだけど転ぶ気配とかそんな感じは全然ない!この魔法のおかげで早く着きそうだ。
「これ凄いね!」
「ほんと、この調子なら確かに2日で着きそうだよ!」
あたしと兄のアルデルは初めて掛けてもらった補助魔法に、少しビックリと面白さが合わさっていてちょっと興奮していた。
「こんなの全然珍しくないぜ?俺たちの間では普通の移動魔法だけど、もしかして初めてなのか?」
クオンが不思議そうに聞いてくる。すると兄が、
「うん、魔族の使う魔法はあんまり補助魔法がないんだ。だいたい攻撃系とか召還系とか創造系や付与系がほとんどで、こう言った移動方法は自身の魔力を使って飛行したりするが普通なんだ。あとは乗り物なんかを作ったりして移動しているよ」
「へ~、そうなんだ。でもそれって、いざって時に大変なんじゃないのか?」
「そうだね、だから現在の魔法研究は補助魔法の研究が多いらしいよ。センターで使用している結果もその研究のひとつみたい。でも今のところ付与系を利用しての結界みたいだから魔法としての防御術は未熟なのかも」
「そうだな、そう言った守備や補助、防御や回復とかは天界の連中が得意だもんな。魔族は攻撃型主体の魔法が多いからそう言った技術は劣っているのかもしれない。でも『攻撃は最大の防御』とも言うからな……。上手くはいえないけど、両方出来ればとても便利だとは思うよ」
などと、何故か兄貴とクオンが話と魔法の話になってしまう。
「相変わらず、魔法の話をするのが好きだな?」
フィフロスがあきれた顔をでクオンを見ている。クオンはひょっとして魔法オタクかなんかですか?
「クオンって、魔法が好きなの?」
あたしは少し後ろに下がって、後方を歩いているフィフロスにクオンの魔法好きを聞いてみた。
「あいつの爺さんが古代遺跡の発掘研究者で、その遺跡からは昔使っていたであろうさまざまな魔法やら術やらを集めていたらしく、あいつはその爺さんの影響で魔法に興味を持ったみたいなんだ。あいつの家には古い魔道書や古文書、貴重なマジックアイテムなんかがたくさんあるんだ。幼い事からその部屋に出入りしていたらしくてさ、爺さんにも懐いていたからいつの間にか魔法の事についていろいろ勉強しているみたい。まぁ、あいつから言わせれば『趣味』みたいなものなのだろうけど」
「へ~、魔法研究が『趣味』なんだ……」
魔法研究者になりたいんじゃんくて、『魔法研究』が趣味なのか……。クオンはちょっと変わった趣味を持っているようで……。まぁ、研究者になりたいのであればマテリアルピクターの研修生になんてなる分けないか。
「じゃ、魔法の事で分からなかったらクオンに聞けばいいんだ!」
そうだ、そうだよ!魔法が苦手なあたしにとっては兄に聞くよりもクオンに聞いた方が分かりやすいかも!?
「え~?クオンに聞くのか?やめたほうがいいぞ?」
「へ?なんで?だって魔法に詳しいんでしょ?」
「確かに詳しいけど…、あいつ結構いたずら好きだからな。俺の知り合いに炎の魔法の使い方で上級者向けの魔法を教わりに言ったやつが居たんだけど、ウソの知識を教えられて魔法を掛けるのに失敗し大火傷を覆ったやつとかいたからな。なんでも上位精霊と契約をしたいと言ったら、召還魔法を使うといいと言われたらしい。しかも初召還で活火山の火口付近で炎系召還魔法を使うと成功率と契約率が上がると言うウソを教え込まれて実践したみたいなんだよ。召還魔法で上位精霊と契約なんて出来るわけないのに…、召還魔法と精霊魔法は全然違う物なのに焦っていたんだろうな。おかげでそいつは大失敗、注意したほうがいいぞ」
「え!?」
「まぁ、俺はウソなんて付かれた事ないけどな」
そう言ってフィフロスはニヤっと笑った。
どうやらクオンは少し性格がひねくれている様だ。
やっぱり魔法の事は兄貴に聞いたほうがいいみたい。
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