マテリアルピクター7話「妖精と精霊」10
あらすじ
ユーディリーが作ってくれた『草の家』で一晩過ごすことになったリオン達。
目的地に付くにはかなり時間が掛かりそうだと言うのだけど、あとから早く移動できる方法があると聞いてビックリ!
そんなものがあるのなら早く使って欲しいと思うリオン。
そして、次の朝みんなで朝食の準備をするのだった。
10
夜が明けて(たぶん明けたんだろう森の中は絶えず明るい)キャンプで使った『草の家』をユーディリーが解除を行っている頃、あたしは食べ物を探すために森の中を散策していた。もちろん、兄貴も一緒だけど。
「なかなか食べ物見つからないね……」
兄貴があたりを見渡しながらそう言う。
「クオン達はどうやって見つけたんだろう?何か探す方法でもあるのかな?」
「そんなの知らないわよ…、それより昨日の夜何の話をしていたの?隣の男部屋は静だなと思っていたのに、途中から笑い声が聞こえたりして随分騒がしかったけど?」
あたしは兄貴に昨日何の話をしていたのか聞いてみた。
あたしがユーディリー達に精霊の話とか聞いていた時、隣の部屋の男部屋は随分静かだったのを思えている。あたし達が話をしている途中で突然笑い声が聞こえたので、何か面白い話でもしているのではにかと思って聞いてみたのだ。
すると兄貴が、「べ、別に何も話していないよ。ちょっと自己紹介しただけだよ……」などと言う。自己紹介だけで笑い声が聞こえるのか?怪しい・・・気になる・・・。あたしが疑いの目を向けると兄貴が、
「ほら、あんなところに木の実があるよ!」
などと言って、話をそらそうとしている。そんなので誤魔化せると思っていると・・・と思ったら、本当に木の実があった!
「ホントだ!木の実がある!やったね、これで朝ご飯確保~!!」
木の実はリンゴみたいな形をしていてちょっと小ぶり。結構いっぱいあって、腕にたくさん抱えてみんなの所へと戻っていった。
「お帰り~。あら、随分たくさん採れたみたいね。これならお昼の分も十分にあるわね!」
ユーディリーがそう言って出迎えてくれた。
ちなみに昨日採って来た果物やら動物の肉やらは、ほとんど食べてしまって今はない。鹿の肉は結構たくさん合ったと思うけど、6人で分けて食べてしまうとそんなに残ったりはしないのだ。そしてまたもやフィフロスが朝の獲物を捕まえていた。
「今回は兎だぞ!!」などと嬉しそうに言う……。どこから捕まえてくるんだろう?その兎にも謎の噛み付いたような牙のあとが……!
ちなみに数は6羽!ちょうど人数分を確保してきたみたいで……。朝からこれを食べるんですか??
「おお、今回は兎か!焼いて食ったほうがいいのかな?その前に皮を剥いた方がいいね。ところで皮はどうする?取って置こうか?どこかで売れるかもしれないし」
「えっ?う、売る??」
クオンが目を輝かせて言う。ちょっと、売るって……?うちらはイライザとナナオを助けに行っているんですよ!?何を言っているんですか!?
「いやダメだ!皮は邪魔になる。荷物も増えて重くなるし、今は売る場所がない。今回はあきらめよう」
などとフィフロスが言う。どうやらあきらめたらしい。
「それじゃ、この皮を使って袋を作ろうぜ!そしたら荷物にならないだろう?」
「ん?そうか、荷物入れにすればいいのか!じゃ、あまった食料はこの兎の皮に入れよう!」
クオンの提案を聞いて納得するフィフロスは、行く準備の支度をしていたユーディリーに向かってこう言った。
「と言うわけで、ユーディリー皮剥いて!」
「え~!?またあたしがするの??自分で獲って来たくせに……」
ユーディリーはあきれた顔をしつつ、兎を持って皮を剥いでいく。ちなみに昨日獲った鹿をさばいたもユーディリーがやってくれたのだ。
「ユーディリーって器用だよね……」
あたしが感心しながらそう言った。
「そ、そう?」
「うん、普通は獣人族が得意そうな気がするのに当の本人は獲って来ただけでその後は全然処理とかしないもんね。」
「そ、そうね……。確かに、何であたしこんな事しているのかしら……?」
言われた本人も困惑しながらテキパキと兎をさばいていく。きっとユーディリーは良い人なんだろう。たぶん「いや」とは言えない性格なのかな?もしかしたら、みんなから一番信頼されているのかもしれない。
「おなかすいた~、この木の実食べて良い?」
とクラウンが地べたにひっくり返ってあたしが持って帰ってきた木の実をツンツンしながらそう言った。
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