マテリアルピクター7話「妖精と精霊」6
あらすじ
妖精族はどうやら補助魔法を多く知っているようで、リオンも水の結界の中で彼らの魔法のおかけで何とか行動できるようになった。
ただし彼らはかなりマイペースなようで、きちんと言わないと何も教えてくれない。
そしてクオンからどうして【マテリアルピクター】という存在が何故必要なのか、水の結界の中を移動しながらいろいろ教えてくれるのだった。
6
あたし達はイライザとナナオを助けるために今も水の結界の中を歩き進んでいる。
「俺が主に、マテリアルだけでは世界を維持するなんて不可能だと思うんだ」
クオンがそう言った。
「不可能?」
兄のアルデルが聞き返した。
「マテリアルピクターって何人いると思う?」
そう聞かれてもあたし達には分からない。あたしと兄貴は困った顔をした。
「マテリアルピクターが1億いようが2億いようが絶対に無理!そんなしょぼい数で世界を維持できるわけがない。いいか?世界っていっても何百、何千といっぱいあるんだぞ?その程度で足りるわけがないだろう?しかも一つの世界に何人のマテリアルピクターが出向いていると思う?一つの世界の小さな国に100人は行くんだぞ?知ってたか?」
「え!?そうなの!?」
う~ん、よく考えると確かにそうかも……。
精霊一体でこの状況だ。それを解決するのにこんなに時間が掛かる。そして解決のための動員人数も多い。マテリアルピクターになるにも試験が結構難しい。その上訓練で脱落する者もいる。
確かに世界を維持するなんてちょっと無理があるような気がする。
「で、俺は思ったんだ。実はどこかにまだ消滅していない精霊界があると!」とクオンは自信満々に言った。
「そ、それは本当ですか!?」
兄貴もさすがにビックリして聞き返した。
「またその話?」
赤毛のケット・シーの少女クラウンがあくびをしながら聞き返した。
「何だよ、じゃ他にどんな理由があるんだよ!?」
「そ、それは……。長老達だって最初はそう思ったけど、でもそれはやっぱり迷信だって言ってたじゃない?」とクラウンが口ごもる。
「アホか?妖精族が迷信信じてどうするんだよ?」
「だって……、確証もないし、ただの推論じゃん」
「推論だけど、今の現状の方がおかしいだろう?なんで今もこうして世界が存在しているんだ?あの当時は連鎖反応で魔界も天界も物質界も消滅してもおかしくなかったんだぞ?」
「そ、そうだけど……」
ん?ちょっと待って!?
「連鎖反応で消滅ってどういうこと?」
「なんだ?知らないのか?精霊界はすべてを支えていたんだぜ、その土台が消えれば他の世界も消えるに決まっているだろう?まぁ、一番精霊界に環境も性質も近かった妖精界は真っ先に消えてしまったけどな。その次に魔界、天界、物質界という感じで消えるはずだったんだ」
「ウ、ウソ~!!!?」
「ウソじゃねぇよ。魔界の国立研究資料専門図書館に当時の記録とその崩壊法則が載っているから見てみるといいよ。魔族が魔界が崩壊した際に、どこへ避難しようかとかいろいろ載っているから」
が~~~ん!!!
そ、そんな……。もしマテリアルがなかったら、魔界が崩壊していたわけ!?
いや、違う。
今もその現象は起きているのかもしれない。
もしかしたら止めっているだけなのかもしれない。
「まぁ、魔界も妖精界に似ていて精霊界の影響がある世界だからな。影響のあるところから順番に崩壊するみたいだからな。元素魔法を使う連中がいるんだから当たり前か!」
クオンの話を聞いてちょっと落ち込むあたし。
そう、今はマテリアルピクターのお陰で崩壊を食い止めているだけなのだ。
だからこそ、「マテリアルピクターは必要なんだ」とクオンはおしえてくれた。
なんだかあたしの知らないことをいっぱい知っていそうな気がする。
7話-5へ
7話-7へ
目次へPR
この記事へのコメント