マテリアルピクター7話「妖精と精霊」4
あらすじ
水の結界に入ったリオン、そこは森が海の中に沈んだような感じの空間だった。
だがそこに映る物はほとんど幻。
どうなっているのか不思議がっていると、ユーディリーやクオンが色々と教えてくれるのだった。
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「でもさ、なんで『海の精霊』だって分かったの?」
あたしがユーディリーに質問してみる。
「あなたが見た精霊が『人魚』みたいだって言ったからよ」
「そ、それだけで?」
「それだけじゃないわ、この結界の特徴もよ。海の生き物が多いわ」
「ナルホド……!」
あたしが感心していると隣で歩いていたクオンが、
「とはいえ、俺らの中に水の精霊使いがいないのがちょっと残念だけどな」
何やらとんでもないことを付け足して言う。
「へ?どういうこと?」
「俺らの中に水の専門家は『いない』ってことだよ」
なぜか、あたしに向かってニヤッと彼は笑うのだ。
「え?だって、妖精族はみんなこういうが得意だって先生が言ってたけど?」
「妖精族といってもみんな得意不得意があるんだよ、それに種族によって属性もあるしな。まぁ、みんなある程度ならオールマイティに使う事はできるんだけど。一番いいのは自分の属性に合った魔法を使うのが負担も少なくて安心して魔法を使う事ができるんだ」
あたしが疑問に思うと、今度は後ろを歩いていた幻狼族のフィフロスが教えてくれた。
あたし達は今歩いて移動している。水の中と言うかこの結界の中をさすがに飛んでいくのは危ない。それに体に掛かる重さも結構半端ない。外にいるときよりも結構重圧~。泳いでいく?って行動もさすがに出来そうにない。なので仕方なく歩いて目的の滝まで行く事になった。
「それにしても動きづらい、足が重い……、とても疲れる……」
ちなみに結界の中はそんなに冷たくもないので、疲れると何故か汗が出る……。
「仕方なよ、湿度が高いんだし。もし人間だったら肺に水が貯まって死んでいるね!」
と、クオンが笑いながらそう言うのだ!
ええ?じゃ、ここの生き物って危ないんじゃないの?
「まぁ、ここは地上の偽物だからここにいる生物も地上の者とは違うんだろうね。普通に活動しているし」
クオンをニヤニヤしながら周りを見てそう言った。
そうこの水の結界は湿度100%の空間なのだ。クオンの言うとおり普通の人間なら死んでいる。でもあたし達は人間ではないのでそんな影響は受けないのだけど、さすがにこのまとわり付く水気の重たさは感じてしまう。
ふと気が付いたのだけど、ユーディリー達はあまり水気の重たさを感じていないみたい。
「あ、あのさ……」
「ん?何?」
「ユーディリー達は、その・・・、水気とか感じてないの……?」
「水気……?別に感じてないけど?」
「か、感じていない?なんで?どうして??あたしさっきから凄く重く感じるんだけど?なんで~?」
あたしが慌てると兄もそうらしく……。
「俺もさっきから凄く疲れるんだけど……」
なんだか遠慮がちに言ってくる。
「ちょ、ちょっと待って。慌てないで、すぐに直してあげるから……!」
ユーディリーはそう言うと、あたしと兄貴の肩に触れて何かをつぶやいた。するとどうだろう?今まで圧し掛かっていた重さがす~と消えていったのだ!
「す、凄い!急に軽くなった!どうなっているの??」
これには兄貴も驚いている。
「これも魔法ですか?」
「そうよ、『水圧保護』の魔法よ。ごめんなさい、あなた達水圧にかかってたのね。気づかなかったわ」
「す、水圧?」
「この中は水の結界つまり一応『水の中』ってことさ。水の中ってことは水の重圧がかかるって事。つまり何万トンもの水を背負って歩いていたって事だ。まぁ俺らは中に入る前に保護魔法を掛けて入ったけど。人間だったらペシャンコだぜ!お前ら、人間じゃなくて良かったな!」
クオンが笑いながらそう説明するのだった。
う~む、こいつ…悪気はないのだろう……だが、一言多い!
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