マテリアルピクター7話「妖精と精霊」2
あらすじ
マテリアルが創りだした【水の結界】の中は奇妙な光景が広がっていた。
まるで水中の中に森があるような感じがして、その中に入るのを躊躇してしまうリオン。
そんな結界の中に平気で入るユーディリーやクオン達。
早く入れとリオンを誘うのだった。
2
一体に何をしたの分からなかった。
クオンが水の結界の中から声をかける。
「おい、何しているんだ?早く来いよ!」
「分かった、みんな行くぞ」
クオンの呼びかけにユーディリー達も水壁の中に入っていく。
「えっえっ!?な、何をしたの?」
あたしの隣にいる兄のアルデルもビックリしている。
「大丈夫、お前らも早く来いよ。」
クオンがあたし達にも中に入れと誘ってくる。中に入れと言われてもついさっきまで、この中に入る事すらできなかったのにそんなあっさりとしかも得体の知れない物の中に入るなんてと思ったら、
「良し、行こう!」
「え!?」
兄のアルデルがみんなが通った水壁に出来た波紋の浮き出ている所に飛び込んだ!
「え~~~!!?」
兄が飛び込んだ一瞬、兄の周りにボコッっと水の泡が現れた。
「大丈夫、息が出来るから目を開けてごらん。」
クオンがそう言うと兄貴は薄っすらと目を開けて、「う~っ」と息を吸い込むように呼吸をしてみる事にした。いくらここが物質界に似せて作られているとはいえ、外の空間とは違いこの水の結界は魔法の一種。何が起こるかわからない。
「ふ~。……リオン、大丈夫みたいだよ?息も出来る」
「だ、大丈夫なの……?」
兄はそう言って振り返りあたしに向かって手を振った。
「でもちょっと重い感じがするな……?なんか手にまとわりつくと言うか、少し動きづらい気がする」
兄貴が中の感想を述べる。
「まぁ、ここは水の中だからな。とはいえ空間が少しゆがんでいるから実際には水ではなくて高密度水分がたくさん含まれているんだ。つまりここは高湿度のでっかい塊みたいなものかな?」
クオンがそう説明する。
「湿度の塊?」
「あぁ、この水の結界は不完全ってことさ。本当の水の結界だったら、ここには本当に水のだけで構成されているはずなんだけどマテリアルが不完全だからただの湿度の高い空間になっているだけなんだ」
「でもさっきは、中に入る事すらできなかったけど……?」
「そりゃ濃度の違うもの同士が入れるわけないだろう?入ろうとすれば反発するに決まっている。それに俺たちは物体ではないすんなり入れるわけがない。この結界は魔法で出来ているんだ。訓練で半実体化出来るようになったからといって俺たちはやっぱり霊体なんだ。だったらこっちも同じ状態になればいいだけのことだよ。向こうにあわせるってことだな」
「へ~。とりあえず、大丈夫みたいだからリオンも早くおいで」
「――う、うん」
まぁ、理屈はよく分からないけどとにかく大丈夫と言う事だけは分かった。
あたしが中に入ろうとしたら、水壁の波紋が少しずつ消えていくように見えるんですけど……?
「な、なんか波紋が消えそうなんだけど?」
「う~ん、そりゃそうだろう?これも一応魔法なんだぜ?そろそろ効果時間切れるんじゃないかな?」
などと、クオンは手を思いっきり伸ばし背伸びしたあと、のん気に言うのだった。
「ええええ!?」
それを早く言えっ!!!
あたしは急いで、水の波紋に飛び込んだのだった。
ボコッ!!
あたしが飛び込んだのと同時に、あたしの周りに気泡がたくさん舞い上がった。
「!!!」
息が出来る!それにも驚いたけど、目に飛び込んできたその風景はとても幻想的だ。
まるで水の中の楽園に見える。
空を見上げると、木々の間から光が降り注いでいる。降り注いでいる光はまるで光の波紋のように揺らめいている。木々の間からは地上の木々に住んでいるといわれる小動物が姿を見せたりその横を熱帯魚と思われる魚が空中を泳いでいる。森のにいる大きな鹿と思われる地上の生き物が草をついばんでる。
地面を見るとほのかに光っており、地上の草花以外に海に生えていそうな海草や藻の一種、さらにはイソギンチャクの様な物まで地上の物と海の物が入り混じっていたのだった。
「な、なんじゃこりゃ!?」
一瞬楽園か?と思ったけど、水の結界の中はわけの分からない世界になっていたのだった。外は真っ暗なのに、この結界の中は明るかったのだ。
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