6話「実施訓練(後編)」
あらすじ
妖精族の4人組、ダークエルフのユーディリー、ゴブリンのクオン、幻狼族のフィフロス、ケット・シーのクラウンを紹介されたリオンとアルデル。
先生は彼らと一緒にイライザ達を助けに行けという……。
え!?先生達は手伝ってくれないんですか?
困惑するリオンだった。
※6話はこれで終わりです(^-^)
近いうちに7話アップするつもり?たぶん……、それまで休憩!
14
「妖精族の中から、マテリアルピクターになった者は一度もないんだよ。もともっも妖精族は数も少ないし、マテリアルピクターになることを渋っていたんだ。でも今回初めてマテリアルピクターの研修試験を受けたんだ。最近の自然エネルギーの異常もあって、このたびこの4人がここ第7マテリアルセンターに入ることになったんだ」
講師のフロン先生はそう説明してくれた。
あたしは、ただただ呆然としていた。こうして妖精族を目の当たりにするとは思わなかった。彼らから自己紹介されたのだけど、今だ信じられないという気持ちが強かった。
妖精族は随分昔に滅んだと学校の授業で教えられていたからだ。それがまさかこの魔界に生きているなんて思っても見なかった。
「リオンさん、どうしたんですか?ぼーとして……」
フロン先生が不思議そうにあたしの顔をのぞいてきた。
「あ、いえ。ちょっとビックリしてただけで……。ところで先生」
「ん?なんです?」
「どうして妖精族が魔界にいるんですか?学校では彼らはもうこの世にはいないと教えられたんですけど……。でも実際に彼らはここにいるんですよね、なんで生きているのなら公表しなかったんですか?」
あたしは先生に疑問をぶつけてみた。
「あなたの疑問はもっともですね、実は避難してきた妖精族はここ第7階層にしか住んでいません。彼らが移住してきた当時は、魔界も天界も溢れ出したエネルギーの処理に困っていました。その時にこのエネルギーの処理方法を彼らに聞いた方法が、今我々が行っているエネルギー採取方法でした。もちろんこの方法は、我々魔族がエネルギーを採り易い方法として教えてもらった方法なのですがこれを悪用しようとした人たちがいたのです」
「あ、悪用……?」
「え、え……。マテリアルは純粋なエネルギーです。当時溢れ返ったエネルギーはある意味、利用方法さえ分かれば無限に使えるすばらしい力そのものであり貴重な存在だったのです。なんたって、今まで目に見えなかったエネルギーが物質化してしかも手にとって触れるようになったのですから。そんなエネルギーを独占しようとする人は後を絶ちませんでした。
そこで当時の魔界ではその技術を悪用されないように、そして避難してきた妖精族の保護もかねて彼らの存在を隠すことにしました」
そんな事があったのか……。なんとなく納得した。先生が大まかな説明を終わらせると、
「彼らはマテリアルの扱いが上手いというか、専門家とも言うべきかな?アルデル、リオン彼らに元凶となったマテリアルの場所まで案内しなさい」
と、フロン先生はあたし達に道案内をしろと言った。
道案内といっても、あの水の中を行くの?しかも入れるのかどうか分からないのに?
「先生、我々は専門家じゃないですよ。まだ修行中だし……」
戸惑った顔でダークエルフのユーディリーがそう言った。
「でも我々よりは、いろいろ知っているし技術的にも格が違うだろう?研修生が2人捕まっているんだ。よろしく頼む」
先生は今度は真顔で彼らにお願いした。
自己紹介した妖精族の4人はそれぞれ顔を見合わせるのだった。
「なんで先生達、手伝ってくれないの!?」
あたしは移動しながら、先生の対応に腹が立っていた。
ちなみに今度は訓練ではないのであたし達はジャージを着ていない。ユーディリー達妖精族のみんなは元からジャージなんて持ってないのでそのままの普段着の格好をしている。普段着と言ってもあらかじめ防御魔法などが施されている特別なマテリアルピクター専用の服だ。武器屋で買った装備用の服だ。あたし達もその格好をしている。
「先生の達にも何か理由があるんだよ、たぶん……」
「これってさ、大変なことなんでしょう?何か理由があるって、どんな理由よ!?」
「ひょっとしたら、これも訓練の一種なのかな?て……」
「はぁ???訓練の一種って……、だったら何で訓練中止なんていうのよ?理解できない!!」
「……」
などと、あたしは兄貴に愚痴をこぼしていた。
あたし達は、現在イライザとナナオが取り込まれている森へと向かって上空を飛んでいる。
すでに夜の時間。あたりは真っ暗、遠くにある水のマテリアルが貼った結界だけが青白く光っているのが遠くで見える。ちょっと不気味だ……。
「今日は家に帰れないかも知れないね……」
「そうね、でも2人を助けないと!」
ごく普通に終わるであろう、実施訓練が初日でまさかこんな事態になるとは思っても見なかった。
「結界が見えてきたぞ」
ユーディリーが前方を見てそう言った。彼女は赤い昆虫を思わせるような2枚の透明の羽根を広げて飛んでいる。妖精族の羽ってちょっと変わっている。他の3人も見るとそれぞれみんな違う形をしている。
目の前に昼間見た巨大な水の結界が迫ってきた。
そしてこの後さらに大変な目に合うなんて、あたしは思いもしなかったのだった……。
第6話「実施訓練(後編)」 完
6話-13へ
第7話「妖精と精霊」-1へ
目次へPR
この記事へのコメント