6話「実施訓練(後編)」
あらすじ
助ける声を求めて探しに来たりオン達が見たものは、マテリアルに囚われているイライザとナナオだった。
マテリアルから不思議な声が鳴り響いた。
それは近づくリオン達に向かって警告する声、さらにマテリアルから何かが出てくるのだった。
11
半透明の人魚があたし達の前に現れた。
その回りにはいくつ物「水玉」が浮かんでいる。
水が形作った……、そう言った方がいいのかもしれない。
その姿を見たら誰でも思い浮かべる物といえば、そう『人魚』といえるだろう。人魚とは上半身は人間に似ていて下半身は魚や哺乳類系の海洋種に近い姿をしている妖精族の一種で水や海、川に住み水属性の力を持ちコントロールすることが出来るといわれている。
でも今見ているそれは、人魚というよりは水で出来た造形物に近い。こういったものに詳しい人がいるのならたぶん今見ている存在を人はこう呼ぶだろう。
『水の精霊、ウンディーネ』
4大精霊のうちの一つで、水の元素を司る精霊で力その物の存在……。力のレベルでいうと下級に属するといわれている。
今あたしの目の前にいる。
何だろう、少し周りが霧が発生した方のよう見えるもしかして空気中の水分量が増えたみたい。これが精霊の力?
「せ、精霊……?」
「精霊というよりは、精霊に近い状態といったほうがいいかもしれない」
「近い状態?どういうこと?」
これは精霊ではないということ?確かに精霊はこの世界から消えたといわれているけど・・・
「マテリアルは精霊の成れの果てだと前に講義で習っただろう?だからマテリアルの中には若干意思が残っている物も存在すると……」
確かに習った、意思のあるマテリアルも存在すると兄はそう言うけど……。
「でもこれって……」
「確かにこれは聞いたことはない……」
あたし達がそう話しているとマテリアルから出てきた人魚が話しかけてきた。
『オマエタチモ、コイツラノナカマナノカ!?』
また頭の中に話しかけてきた!
「あ、兄貴これって!?」
「精霊の会話はすべて念話つまりテレパシーだ、同じように念話で話せば何とかなるかも!?」
原理は精霊と一緒なのか?とりあえずあたし達は、念話で話しかけた。
『あなたの眠りを邪魔しに着たんじゃないの、そこの2人を返して欲しいだけなんです。返してくれればあたし達は何もしません。』
『その2人はあなたの眠りを邪魔したかもしれない。それは謝ります、もう2度としないので2人を返してもらえないでしょうか?』
あたし達の話が通用しただろうか?すると、
『――オマエタチモ、コイツラノナカマノナカ?ナラ、カエスワケニハイカナイ!!』
ええええ……!?
な、なんで~?会話できても交渉失敗!!!
『ニドトココニコレナイヨウ、コノバショヲフウインスル!!』
そう言うとマテリアルの人魚が呪文を唱えている。
えっ!?ま、魔法が使えるの!?
「まずい、精霊魔法だ!!」
兄貴がビックリして後ずさった。
「え!?せ、精霊魔法って何!?」
「説明は後!逃げるよ!!!」
「えっえっ????」
そう言って兄貴はあたしの手を取って、物凄いスピードで滝のある場所から遠ざかっていった。
「ちょ、ちょっとイライザとナナオはどうするの!?」
「今はそれど頃じゃない!!」
後ろを振り返ってみると、なんと物凄い水が発生している!それは森の中で突如巨大な噴水がまるで火山の噴火のように大量の水があふれかえっていた。
「――う、うそ?」
信じられない光景が広がっていた。
「あの中にいたら、俺たちもイライザみたいになっていたのかもしれない……」
兄貴も後ろを振り返ってそう言った。
その溢れ返った水は広大な森を飲み込んで次第に周りを包むように球体になっていき、ついには巨大な水の結界が出現したのだった。
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