1話「魔界の少女」
あらすじ
タダの研修生というあんまり嬉しくない真実を知って落ち込むリオン。
証明証を持って家に帰るのだが、一番の難関はマテリアルピクターになる事を快く思っていない母親にどう説得すればいいのかと思い悩むのだった。
4
「は~~~っ……」
深いため息……。
あたしは、卒業証書と「マテリアルピクター」の研修書をもって自宅に帰ってきた。
我が家はなんと言うか、人間の世界で言うと「ニホンカオク」という建物に似ているらしい。家の前には大きな木製の門があるんだけど、そういえば友達に「ブケヤシキ」って言われたな……「ブケヤシキ」ってなんだろう?
庭には訓練所があって(お父さんは「道場」とか言ってた)ちいさな庭園がある。結構広い家なのかもしれない。
「お帰りなさいませ!若、お嬢様!!」
屋敷の奥から小さな影が……。
それは、直立した小さな竜のように見える存在。その竜がお出迎え。体長は30センチほどで体色は黒。背中にはコウモリに似た小さな羽が生えている。顔のアゴには少し長めの白いヒゲがある。目が悪いのか小さな紐かけ眼鏡をかけている。
うちの家に代々仕えている黒竜の範空(はんくう)だ。かなりの歳、本人曰くもう30万年くらい生きているらしいとの事……なんだか、うそっぽい……あたしは信じていないけど~。
あたしと兄貴の鞄を器用にもって、小さな羽根で中に浮き奥の居間の部屋に運んでくれた。
すると、
「おかえりなさい~♪二人とも卒業おめでとう!
お母さん、仕事で卒業式にこれなかったけど卒業前に就職もきまった本当に良かったわ♡」
母の喜ぶ声……。
ウェーブかかったあたしに良く似た色髪に、ちょっと童顔な顔。少し大きめの目に水色の瞳をきらきらさせている。背丈はあたしより、少し高いかな?水色のエプロンをつけて台所から顔を出してきた。
すると、
「就職じゃないよ、まだ研修生だよ。」
と、兄貴が!
「ん?研修生?就職が決まったんじゃないの?」
「そう簡単にはなれないんだよ、いろいろ条件があるらしいからね……」
そう言って、兄はテーブルについて椅子に座ってお茶を飲み始めた。
「そうなの?でも、研修生でもすごいわ~♪
試験はものすごく難しいって言っていたし、採用されるにはそれなりの実力が必要だって聞いたから・・・。仕事自体もきついっていうし、正直お母さんちょっと心配なんだ・・・」
そう言って母もエプロンを解いて、テーブルについて兄と一緒にお茶を飲み始めた。あたしも一緒にテーブルについた。
「ところで、お父さんは?」
あたしは、お茶を飲みながら母に尋ねてみた。ここ3日ほど姿お見てないのよね~、子供の卒業式だって言うのにさ!どこ行っているんだか・・・
すると母さんが、
「父さんは、出張よ。」
「え?いつから?」
「1週間ほど前からよ?知らなかったの?
最近また、空間の異常が発生したため調査に行ったのよ。空間がゆがむと魔物がたくさん出現するから大変よね~」
なんか、ため息混じりを含めながら人事のように話す母。
おいおい、それは結構大変なことだと思いますよ、母上!
「それじゃ、父さん当分一ヶ月くらいは帰ってこないわね……。戦闘訓練とかつけてもらおうと思ったのに……」
あたしの父は、警備体長をしているのだ。
おもに、辺境近辺の警備と治安を任されてる。人間達の言うところの警察?見たいな感じかな?
ここ数千年エネルギーバランスがおかしくなったため空間が歪み、不純なエネルギーが流れ出しそこにいた生物を変化して魔物が出現するようになった。今までは軍隊が魔物討伐をしていたのだけど、最近魔物の数も増え辺境の土地まで兵をまわせなくなり、警備隊も魔物討伐の仕事をするようになったためかなり忙しくなっているみたい。
「あら?戦闘訓練って……マテリアルピクターって結晶体を採取するだけじゃないの?」
母が不思議そうに聞いてきた。
「この紙見て……」
あたしは、センターからもらった紙を手渡した。
「……、あらまぁ~、戦闘試験があるのね!……。
でもそれってこの職種、危険って事よね……」
説明文が書いた紙を持っていた母の声のトーンが急に下がった!
「はぁっ!!」
しまった!
母には職種試験を受けるとき、このマテリアルピクターは危険じゃないからと言い聞かせて受けたんだった!
みると、横で兄が頭抱えて『お前、とんでもないことしたんだ!!』って感じでにらみつけていた……。
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