6話「実施訓練(後編)」
あらすじ
声の主を探していたリオン達の前に大きな滝壺が有った。その滝壺の中に大きなマテリアルが!
そのマテリアルの中には、なんとイライザとナナオの姿が!
まさか取り込まれたのか!?それに助けを求めた声の主はもしかしてこの二人?
リオンが注意深く様子を見てみると、マテリアルから声が聞こえてきたのだった。
10
「2人はあのマテリアルに捕まっているみたいだね……」
兄のアルデルは、滝つぼの様子を見ながらそう言った。
あたし達は、この状況をどうにかしようと考えてみる。
謎の助けを呼ぶ声を聞いて、この場所までやってきたあたし達。
そこには滝壺の中にある巨大なマテリアルの中に、イライザとナナオが取り込まれていたのだ。
「水の中にあるから、『水のマテリアル』って事かしら?」
「そうだろうね……」
この滝壺のマテリアルは、たぶん『水のマテリアル』なのだろう。
しかもかなりの大きさだ。その大きさはと言うと2メートルくらい、人一人分は余裕である。その中に二人が閉じ込められている。
「どうすればいいんだろう?」
「なんでマテリアルが2人を取り込んでいるのかが分からない」
確かに、普通マテリアルはシールドやバリアを張って人や物を寄せ付けたりしない。こんな風に自分の周りに人を寄せて取り込むことはない。どういうことなのだろう?
あたし達が迷っていると、水のマテリアルが輝きだした!
「あ、兄貴!」
あたしは兄の後ろに思わず隠れた。だってマテリアルが水柱をあげて浮上してきたからだ。それと同時にマテリアルの周りに取り込まれた2人も一緒に浮上する。
近くで見るマテリアルはかなりの大きさだった。幅1メートルくらいあるだろうか?
「――お、大きい」
兄もビックリしている。
そりゃそうだ。高さだけで2メートル、幅が1メートルもあるのだ。
あたしたちよりも大きいのは確かだ。
ついさっき見た、ホーリークリスタルよりもでかい。訓練を初めたばかりだけど、こんな大きなマテリアル見たことない。
訓練で見つけたマテリアルなんて、小石程度もしくは米粒程度がほとんどだ。
『オマエモ、ワタシノネムリヲジャマスルノカ!?』
「……えっ!?」
い、今何か声が聞こえた……?
「あ、頭の中で誰かがしゃべった!?」
「ああ……」
それはどうやら兄も聞こえたようで……。
『ココカラ、デテイケ!』
「ま、まさか!このマテリアル、意思があるのか!?」
兄が驚いた!
「えっ!?この声って、マテリアルがしゃべっているの!?」
ウソでしょう!?まさかこの訓練施設の中に意思を持つマテリアルが存在しているなんて!!?
ホーリークリスタルですら、そんな意志は全くなかったのに!
このマテリアルは意志があるのか!?
あたし達が驚いていると、マテリアルの中から何かがうごめき始めた。
最初は粘った水の塊のような姿だったのだが、次第に形を変え上半身は人のような形を下半身は魚のようなの形を取り始めた。それはマテリアルの中から手を伸ばし外に出ようとしている。
「あ、兄貴これって……」
「…………」
緊張が一気に広がる!
――それはマテリアルの中からゆっくりと姿を現したのだった。
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