6話「実施訓練(後編)」
あらすじ
珍しいマテリアル『ホーリークリスタル』
初めて見る聖属性のマテリアルを眺めるリオン。このマテリアルは、天界の天使たちが守護しているという。なんでこんな所にあるのか不思議だか、ちょっと興味が出たりオンは触って見ることにした。
7
マテリアルは自然エネルギーの結晶体。それは一般的な常識、中には違うものもある。
人間の信仰で生まれるマテリアル。そんなマテリアルが存在する。
『ホーリークリスタル』
それは聖なる力で出来ているらしい。正確に言うならプラスエネルギーの結晶体。その場所を訪れた人間にも多くの影響を与えるようだ。マテリアルピクターもその恩恵を受けることが出来るのだそうだ。主に長期滞在するマテリアルピクターにとっては重要な場所になるのかもしれない。主に人間達が祈りをささげる場所に出現する。
このマテリアル、抵抗もないもないので簡単に触ることも出来る。
「ちょっと触ってみてもいいかな?」
兄の意見なんか聞く前にあたしはそう言って、ホーリークリスタルに触ってみた。
するとどうだろう、手に触れたところから何か暖かい物を感じた。あたしの脳裏に光が満ちていき体がポカポカしてくるのが分かる。そしてこれは何だろう?さまざまな人の思いなんだろうか、いろんな人の顔が浮かんでは消えて浮かんでは消えてを繰り返す。ひょっとしたらこれはここに来て祈りをささげていった人たちの顔ではないのだろうかとあたしは思った。
なんとなく天界の人たちが、大切にしようと思う気持ちが分かるような気がした。
これは採ってもいけないし、破壊してもいけない物だ。
だがそれと同時に、とても強い力を思っているのも分かる。これを守るのはとても大変なのかもしれない。
「触ってみてどうだった?」
兄が興味津々で聞いてくる。
「なんかね……、とっても暖かかった……」
「へ~」
今ホーリークリスタルから離した手を見てみる。まだ暖かい……。
『リ……オン……、たす……け……て……』
「呼んだ?」
「え?何?どうしたの?」
突然あたしが声を出したので、兄がビックリして不思議そうな顔をした。
何だろう?不思議と誰かが呼んでいる声がした。その声はなんだかとてもつらそうな感じだった。
「今ね、声が聞こえたの!誰かが呼んでる!!」
「え、えっ??」
あたしはそう言うと、ビックリしたままの兄を置いていって声のするほうへ駆け出した。
『だ…………、す…………け……で……』
また聞こえた!
しかも今度のは、ひどく濁った感じのか細い声だった。
強いて言えば、雑音のような感じ。
「リオン!!!」
遠くで兄が呼んでいるが、あたしは感覚を鋭く尖らせ気になる方向へと背中の黒い翼を広げて飛んで行った。
誰かが助けを呼んでいる!
「リオン!!?」
リオンのやつ、どこへ向かったんだろう?
ホーリークリスタルを触ったとたん、急に飛び出していくなんて……。
俺は、静かにたたずむ白く光り輝くマテリアルを見た。
このマテリアル『ホーリークリスタル』は【癒しの結晶】とか【奇跡のマテリアル】とかさまざまな呼ばれ方をしているが、正直得体が知れない。みんなこのマテリアルを神聖なものとして扱っている。そんなマテリアルがリオンに何かをしたらしい。
確かに強い力をこのマテリアルから感じる。
疑問に思いつつ、もし自分も触ったら何か奇跡みたいなことが起きるんじゃないんだろうか?
そう思って手を伸ばしてみて、ちょっと考えた。今はそんなことしているときではない!
俺は、マテリアルに触るのをやめた。むやみに触るものではないと思った。
「リオン、ちょっと待って!!!」
俺はリオンが飛んで行った方へと追いかけていった。
きっと誰かが助けを呼んでいるのかもしれない。
何せあのマテリアルは祈りの力で出来ているのだから……。
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