6話「実施訓練(後編)」
あらすじ
リオン達がマテリアル探しに苦戦している頃、順調にマテリアルを集めるイライザとナナオ。広大な森の中で大きな滝の中に特大のマテリアルをみつけた。
この大きなマテリアルを採れば成績上位への行けるはず。
イライザとナナオは、早速マテリアルを採取することにするのだった。
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「マテリアルが抵抗しているわね、ナナオ大丈夫?」
イライザが注意深くマテリアルを見て、自分の杖を手に持っていつでも呪文が唱えられる体勢をとった。
「大丈夫です。このくらいなら何とかなります。」
そう言うナナオだが、マテリアル採取で何度も魔法を使っているのでかなり疲労が溜まっているはず。イライザはナナオの様子を見ながら自分も呪文を唱え始めた。
ナナオの唱えた水流変化の魔法で水中にあるマテリアルを外に出そうとしているのだか、マテリアルも同じように水流を操って抵抗している。
「そこら辺にいる魔物と違ってマテリアルは抵抗力が強いですね……」
ナナオが苦しそうに言う。やはり疲労がたまっているようだった。
「何言っているの!?ここは魔界とは違うのよ?力の働き方もあたし達の存在も何もかもが違うから、抵抗力が高そうに見えるだけよ!」
イライザがそう言う。
「そうか、いつもと違うから魔法の効き目も変わってくるんですね。慣れるのに時間がかかりそうです……」
魔法使いがもしマテリアルピクターなった場合、人間界での魔力の消耗が激しいと言われ不向きと言われることがある。彼らのほとんどが魔法を攻撃手段としているためで、武器を使って採取するよりもかなり厳しいと言われる。
マテリアルピクターになるにしてもかなり強い魔力の持ち主でなくては、この職業につくのは難しい。上位魔族出身で元々魔力の強いイライザとは違い、ナナオはそれほど魔力が高いほうではない。試験で受けたテストなどではマテリアルピクターの素質はあると認定はされたが、実際に人間界へ行ってマテリアルを採取できるのかどうか、本当に自分がマテリアルピクターとして役に立つのかナナオ自身まだ少し不安が残っていた。
そして実践訓練で何とか魔法を使ってマテリアルを採取してきたが、さすがにこの環境と魔力の激しい消費でかなり疲れが溜まっていた。
「ナナオ、無理しちゃダメよ!もしダメだったら私が代わりにやるわ!」
様子を見ていたがナナオの顔が少し悪い、心配したイライザが声を掛ける。
「大丈夫です!イライザ様はマテリアルが出てきたらシールド破壊を行ってください!」
イライザにはそういったが、マテリアルの抵抗はかなり強く力負けしそうだ。
訓練が始まってまだ活動時間3時間ほどなのに、こんなにも魔力を消耗するのか……。これではイライザ様のパートナーなんて務まらない。実際のマテリアル採取をするときは人間界に1週間から2週間滞在することが多いのに……、これではダメなのかもしれない。もしかしたらマテリアルピクターにすらなれないかもしれない……。
ナナオにとって、イライザと一緒にマテリアルピクターになることが夢なのだ。
小さい頃にイライザが言っていた「将来はマテリアルピクターになりたい」という夢。動機やどうあれ、ナナオは彼女の夢を応援していた。そして自分も一緒になると誓ったのだ。
マテリアルピクターはパートナーが必要だ。魔力の弱い自分といつも一緒にいたイライザ。最初はくじで決まったパートナーだったけど、最終的にイライザは自分をパートナーに選んでくれた。そのイライザのために、そしてパートナーとして一緒にいるために……。
ナナオにとって、イライザは「主人」と言うよりも友達であり親友なのだ。そんな友達の夢を自分が奪う事になっていはいけない。
ナナオは魔力を更に込める。だが、マテリアル後からはその上をいこうとしていた。
力に押しつぶされそうになりナナオの心に一瞬、「ダメかもしれない!」という不安がよぎってしまった。
その一瞬、強い光がマテリアルから放たれる!
迷いが術の力を弱めてしまったのだ!
――(アブナイ!!)ナナオをそう叫ぼうとした瞬間。
ドバババーーーッ!!!
「キャーーーッ!!!」
「うわーーーっ!!」
大量に押し寄せる水!
互いの力が爆発したかと思うと術の効果が切れてしまった。マテリアルの力なのか、水を取り込みと引き寄せるマテリアルの大きな力が大量の水を操り大きな渦となって2人に襲い掛かった!
「イ、イライザ様!!」
「ナナオ!!」
イライザ様、申し訳ありません……。
自分の力が足りないばかりにこんなことになってしまった。薄れいく意識の中でナナオはイライザに謝った。
マテリアルの水の力に引き込まれ、イライザとナナオは滝の底へと落ちていった。
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