結晶採取師~マテリアルピクター
第6話「実施訓練(後編)」
水の精霊
あらすじ
自然エネルギー「マテリアル」を採取する結晶採取師『マテリアルピクター』になるために研修を受けるリオン達は、本格的な実施訓練を始めた。
この実施訓練はなんとランキング制で月毎に成績が決まり、上位の者がマテリアルピクターとして仕事につくことが許されるのだ。
そんな中、頑張ってマテリアルを採取するリオン達。
なんか色々有りそうだけど、リオンは頑張って上位を目指そうと決意するのだった。
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マテリアルピクターになるための最終訓練「実践訓練」では、本場さながらのマテリアル採取が行われていた。
訓練用フィールドの中で、リオンたちは頑張ってマテリアル採取を行っている。
そんな中で、講師フロン・マーリックは研究室の中で椅子に座り物思いにふけていた。
「また始まるのでしょうか……?」
マテリアル採取は階層が指定している各エリアごとに指定人数が決まっているらしく、それ以上他のエリアに人が介入することは禁止されている。表向きは「介入禁止」となっているが、それは各々の判断に任されているため実際には完全に無法地帯状態でルールを守っているところなんてない。なのでそんな環境でやっているわけだから、マテリアル採取自体が奪い合い状態となっている。ヘタをすると別の階層の人と戦闘になる可能性もあるわけだ。
それにその戦闘によって人間界に住む住人に多大な被害を及ぼしているところもある。マテリアルによる被害だけでなくそういった外部の戦闘行為によって他の世界が巻き添えを食うということはあってはならないことである。それは大きな問題にもなっているのだが、誰が主犯なのかも分からないため捕まえようがなかった。しかし、数百年前ある出来事が起きた。
人間界ヘ行ったマテリアルピクターの中でも立ちの悪い行いが目立っていた者が、何者かの手によって処罰を受けて返還されたということが起き始めていた。処罰を受けたマテリアルピクターは、十数年間意識が戻らず一種の封印状態に陥っていることが分かった。しかもどんな治療処置をしても彼らが目覚めることはなかった。当初はどこかの不法者の仕業だとか天界の連中が邪魔をしているだとか勝手なことを言う階層支配者達の意見が多かったのだが、人間界へ調査に向かった者の話によると魔界の者でも天界の者でもない別の何かが排除行為を行っていると言う調査結果が出たのだ。何故分かったかと言うと、魔界の者が使う魔力や天界の者が使う法力でもない別の力によって行使されているということがわかったからだ。
そしてこれがどういう事なのか、魔界の者達はそれが何なのか薄々気づき始め次第にその現象を恐れ己の行為を恥この事を話題にすることはなくなった。
だか時が立ち、人々はまた忘れるもの。やはりエネルギー不足や更なるエネルギー確保のためにまたマテリアル採取の奪い合いが始まろうとしていた。その行為がまたあの「怒り」に繋がらないとも限らない。
「魔族というのは本当に『力』というものに惹かれるんですね……」
フロンはため息をつきつつ、研究室の窓に目を向けた。窓の外には、リオンたちが訓練している場所が見える。この研究所の窓からいつでも訓練フィールドに設置してあるマテリアルから超常現象を観察することが出来る。
「これから大変なことになるかもしれないですね。さて、どうしたものか……」
そう言いながらさして気にした様子もなく、テーブルに置いてあった紅茶をすするのだった。
その頃リオンたちは、3つ目のマテリアルを採ることに成功した。
「結構うまくいったでしょう?」
「まぁまぁかな?」
「え~、そんなことないよ~!!」
「もう実践訓練が始まって2時間経っているんだよ?なのにまだ3つしかとっていないなんて、これじゃランキング上位に行くことは出来ないよ?」
「う~、それはそうだけどさ……」
訓練が始まって2時間が過ぎてきた。
最初に見つけたマテリアルはいろいろ妨害があって、採取するのに結構時間がかかったんだけその後の2つは何とか見つけて採取できた物だ。他の研修生はどのくらい採っているんだろう?気になるけど、今のままのペースだと上位に行くことは出来ないのは確かだ。
「はぁ、なんかうまくいかないよね……」
「まぁ、それはしょうがないよ。実施訓練は始まったばかりだし、本番はもっと大変かもしれないよ?
ただ今のところ採取場所が被っていないみたいだからスムーズにマテリアルを採る事ができるのだけど……」
「だけど……?」
兄貴が少し考え込む。
「なんかあるの?」
「ん?いや、なんでもない」
「?」
「後2時間くらいしか時間が残っていないと思うから、頑張ってマテリアルを探そう!」
「えっ!?あと、2時間くらいしか時間残っていないの?」
「たぶんね、まだ最初の訓練だし。これから夜間訓練を行ったり何日間かの宿泊訓練なんかもあるみたいだから。これからもっと大変になってくると思うよ」
はぁ……、これからまだまだいろいろありそうな気がするけど、今は数多くのマテリアルを集めることだけに専念しよう!
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