5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
謎の私服を着た妖鳥族の2人組みが気になったリオンは、講師のフロン先生に事の顛末を伝えることにした。
リオンが報告した内容について、マテリアルセンターでは緊急会議が行なわれことになった様子。
どうやらそれは大きな問題だった見たいで?
※5話はこれで終わりです(*^-^*)
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リオンたちが実践訓練を行っている頃、フィールドの外では研修所の講師たちが話し合いを行っていた。
施設の一角でマテリアルセンター支部長オデリックと各クラスの講師、マテリアル研究者などを中心に会議が行われていた。もちろん、フロンやジャンカンもいる。
リオン達が報告した事が大きな問題になっていた。
「私服の研修生が紛れ込んでいただと!?それは本当か?」
「はい、訓練中は全員ジャージを着用させていますしもって来れなかった者には施設の用意したジャージを渡しているので、基本的にジャージを着ていない研修生がこの中にいること自体が不自然です。」
「するとスパイと言う可能性もあるとい事ですかな?」
「そう言うこともあります。」
「そう言うこともあると言うことではなく、スパイしかないだろう!?」
「まだ断定できません。用意したジャージが何らかの理由で着用できなかった場合もあります。」
基本的にマテリアルピクターとしてまだ実力ない研修生は、訓練時はジャージを着用することが義務付けられている。
「もっと分かりやすい方法があるでしょう?研修生全員に通信機を持たせているのですから、呼び戻せばいいだけの話です」
「ほう、ではその研修生はどんな名前なんだ?種族は?どこのクラスの物だ?」
職員の一人が報告に上がった講師に訊いた。
「…………」
「――種族は、『妖鳥族』だそうです。」
それまで黙っていた講師フロンが口にした。
「――!妖鳥族だと!?」
「我が第7地区はいない種族ですね・・・」他の講師が言う。
妖鳥族は第3層に住んでいる種族だ。
「いないわけではない、数が少ないだけだ。で、今回の研修生に妖鳥族がいるのか?」
ここのセンターの支部長オデリックが聞いてきた。
「いません。」フロンが言う。
「!!?」
「では、やはり……」
オデリックが深刻そうな顔で、「ふ~」深く溜息つく。
「たぶん、各施設にいるマテリアルピクターの数を減らそうとしているのかもしれないですね」
「そ、そんなことをしたら……」
「ええ、それは他のセンターも分かっているはずだと思いますが、でも今の状況を考えるとそれが自然だと思います。マテリアルはエネルギーです。それを手に入れることが出来るマテリアルピクターはセンターだけでなくこの階層全地域に膨大なエネルギーをもたらす存在でもあります。
階層地域によってじは、採取するマテリアルエネルギーが足りないところもあります、そういったエネルギーの不足を補うために他の階層もマテリアルの奪い合いをするようになりました。今までなかった方が不思議なくらいです。そしてこの第7階層にもマテリアルを奪うため、新たに邪魔になるマテリアルピクターを見るためもしくは妨害するために偵察に来たと言ってもいいでしょう。遅かれ早かれ我々もその奪い合いに巻き込まれるのです」
そうフロンは静かに言った。ジャンカンも腕を組んで静観している。
「…………」
その場にいた全員が押し黙った。
「まったく、情けないことだ。魔界の者が自然界調整を行って数百万年、本当に権力や力というものに弱い種族だとつくづく思うよ・・・。これをあの方が知ったとしたらどう思うことか……」
「支部長……」
「だからこうして、実施訓練でランキング制度を導入したのではないのですか?」
それ以降、誰も口にしなかった。
まさかそんな事態になっているなんて、実施訓練を行っているリオンたちは知る由もなかった。
第5話「実践訓練(前編)」 完
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