5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
リオン達が妖鳥族の2人組みを相手にしている頃、イライザとナナオは実施訓練用の擬似空間にある広大な森のエリアでマテリアルを採取していた。
順調にマテリアルを集めていると言うのにあんまり浮かない顔をするイライザ。
ナナオはそんなイライザを心配するのだった。
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「イライザ様、あそこにもマテリアルがありますよ!」
「あっそ……、はぁ~……」
「イライザ様?」
イライザはため息を吐くと、面倒くさそうに広大な森の上を箒に乗って見下ろしていた。
イライザとナナオは順調にマテリアルを集めている。ここでマテリアルを集めているのは、イライザとナナオだけだった。
『お前は1番でなければならない』『期待しているぞ』『他の誰にも負けるな』
イライザの頭の中では父のさまざまな期待の言葉が過ぎっていた。
その様子をナナオが見ている。
「イライザ様、休憩しましょうか?」
「ん?何?あぁ、休憩ね。そうね……、そうしましょう」
「……、イライザ様」
近くの森の中にある少し広い場所に降り立って、イライザとナナオは休憩をとる事にした。
ナナオは、持ってきた水筒からお茶をイライザのコップに注ぎ込む。
ここへきて1時間ほど、マテリアルの採取順調ですでに5個手に入れている。
「イライザ様、何か悩みでもあるんですか?」
お茶の入ったコップをイライザに渡す。
「悩み?そんなのあるわけないでしょう」
「そうですか……」
コップのお茶を見ながらイライザがそうつぶやいた。
「…………」
「あの……、イライザ様」
「何?」
「あの……、こういっては何ですが、リオンのお兄さんについてです」
「アルデル様がどうしたの?」
「その……、正直あの方にかかわるのはやめた方がいいと思うのです」
「な、何でよ!どうして、みんなそう言うの!?」
「それは、イライザ様が一番分かっているはずです。それにお父上ユディエル様にも、この事は言えないはずですよ。もちろん、今はまだ大丈夫だとは思いますが……、でも将来のことも考えてみるとやっぱりやめるべきです」
「……」
イライザは薄々分かっていはいたのだ。ナナオの忠告も、もっともだと思う。自分はかなり高望みな願いをしていることも分かっていた。
「はっきり言われると結構つらいわね……」
「すみません……、ユディエル様がイライザ様に期待を掛けていることもプレッシャーになっていると思いますが、さすがにこればかりは例えゴルベル家の力をもってしてでも無理だと思います。」
そう言うとナナオは黙り込んだ。
「どうすればいいかしらね……?」
静まり返った森の中でイライザはそうつぶやいた。
イライザが結構深刻な悩みを抱えている一方、あたしはと言うとちょっと大きくなりなり過ぎた風のマテリアル相手に苦戦していた。
シールドを何とか破ったと思ったら今度は、マテリアル自身から強烈な疾風攻撃を食らう。あたし達は自分に近づけさせまいと物凄い風を送り込んでくる。
「これじゃ近づけないよ!!」
「今力を弱めてみるから我慢して!!!」
風の音が凄くて、こっちも声を張り上げないと相手の声が聞こえない。精神体なんだからテレパシーで話してみようっと思ってみたが、どうもこの風は通信系の魔法や機械なんかを狂わせる効果があるようでテレパシーは使えなし、それならとためしに通信機もやってみたが案の定使えないと言うことが分かった。
なのでこうやって声を張り上げるしかない。
兄のアルデルが呪文を唱えると若干風の威力が収まったように見える。
「おっ!?効いてる?」
「いや、ダメだ!」
「えええっ!?」
そういった瞬間、また強烈な風が吹き起こった!
「うひゃ!!」
これはひどすぎる!!もし普段はいているスカートの格好のままだったら大変なことになっていたかも!
ん?待てよ、あたし達ジャージ着ているのに何であの妖鳥族の2人私服なんだ?
――なんか変だぞ?
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