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【今月のお題小説】【長い夜】
お題内容は
こちら
今回の話は前回の続きみたいな感じで書いてます。
まぁ、前回を知らなくても十分分かる?ような書き方をしていると思う・・・たぶん(^-^;)
絵本みたいな雰囲気で書いてる感じかな?
今回も4ページほどあります(^∀^)
9月企画小説「長い夜」
秋風が吹く季節にしてはまだ遠い山の中。
今日も山間の村では秋祭りの準備に余念がない。
「今年は大変だったからね……、祭りがうまくいくといいのだけど」
「大丈夫だろう?今日はいい天気だし、うまくいくと思うよ?それより一杯やっていかないか?」
「いいよ、遠慮しておくよ。今回は大事な用事もあるし……」
「そうか……、それは残念だ」
そんな会話が聞こえてくるのだった。
今年の秋祭りうまくいくといいね。
村の人々はそんな話しばかりしている。
祭りと言えばだいたい夏をイメージする物が多いと思うが、秋もまた祭りを楽しむ季節でもある。特に秋に行われる祭りは収穫を祝う祭りが多く、この村でもその収穫を祝う祭りを行うのだ。いわゆる『収穫祭』と言われる物だ。
ただ今年は例年に比べ豊作とは言えず、台風の影響もあって村でも今年の祭りは大丈夫なのかと言った不安の声がたびたび合った。
「今回は社のほうも影響はなく、村の被害も少ないし悪い気分を吹き飛ばすには祭りをやったほうがいいのではと思い今回も祭りを開催することにします」
村長の宣言を聞いた村人たちは安心して祭りの準備を始めたのだった。
「ねぇ、知ってる?今年も村でお祭りがやるんだって!僕も行きたい!」
僕は父ちゃんに祭りに行きたいとおねだりした。
「ほう?祭りか……。じゃ、行って見るか!?」
「あんた!そんな暇があるんだったら冬に越すための食料集めをしてきたらどうだい!!」
小さな弟をあやしていた母ちゃんが凄い剣幕で怒った。確かに秋が過ぎれば冬の季節、雪が降って食料集めなんて出来なくなる。母ちゃんが怒るのも無理はないかもしれない。
「い、いーじゃねぇか。祭りくらい……、なぁ!」
「僕もお祭り行きたい!」
「キッ!!」
母ちゃんが物凄い顔で僕と父ちゃんを睨みつけたのだった……。
山のふもとにある小さな村では毎年収穫祭を行っている。今年取れた米や麦などの作物を神様にお供えして来年もいい作物が採れる様にとお祈りするのだ。その際に出店と呼ばれるお店がたくさん並び、村の道では神様に奉納する踊りが披露される。
僕はその話を聞くたびに祭りに行ってみたいと思うのだった。
「でも今年は台風で村も酷い目にあったからな……、祭りをやるかどうか微妙だと思うぞ?」
「え!?そうなの!?」
「あぁ、でも村の様子を見る限り、今年も祭りをやるみたいだな」
「父ちゃん見に行ってきたの?」
なんと父ちゃんは僕に黙ってこっそりと村の様子を見に行ってたのだ!ずるい!
「いいか、村に行くにはちょっとした努力が必要なんだぞ。お前みたいなチビにはまだ無理だな!」
「僕、チビじゃないもん!!」
「あはははははっ!いいか?村に行くには『化けない』といけないんだぞ?」
「化ける……?」
「そうだ、化けるんだ。でないと村に入れない」
父ちゃんは村に入るには、『化けない』といけない僕に教えてくれた。
そう言うわけで、僕は化ける練習を始めるのだった。
「父ちゃん、これは何?」
僕は父ちゃんが用意した白い布を持って聞いてみた。
「これはな、化けるための道具だ!すごいだろう?」
「どうやって使うの?」
「これはな……。こうやって、こうするんだ。」
そう言って父ちゃんは、白い布を頭から被った。父ちゃんはあっという間に白いお化けになった!
「凄い凄い!父ちゃん、僕もやる!」
「おう、やってみろ!」
僕は父ちゃんから白い布をもらって、それを頭から被った。僕の体はあっという間に白い布に覆われて外からは見えなくなった。
「父ちゃん、これ凄いね!――でも、これ全然前が見えないよ?」
「フフフフッ、それはだな……。こうすればいいんだ」
そう言うと、僕が被っているの布に父ちゃんは穴を二つ開けた。するとどうだろう、さっきまで外が見えなかったのに見えるようになった!
「父ちゃん、凄いね!前が見えるようになったよ!!」
「父ちゃんにかかれば、どって事ないぞ!それじゃ、今度はお化けの練習をするぞ!」
お化けの練習を父ちゃんと一緒に頑張った僕。
それから一週間が過ぎていった。
「どうやら今年も無事に祭りが行われるみたいだな。村の連中も今夜の祭りの準備をしているぞ」
村の様子を見に行っていた父ちゃんが帰ってきた。
「ホント?じゃ今日は祭りに行くんだね?」
「あぁ、祭りに行く準備をするか!」
「うん!」
僕が元気よく返事をすると、
「まったくしょうがない親子だよ」
その様子を見ていた母ちゃんがあきれた顔で言った。
収穫祭の祭りは夜に行われる。
夕日が沈み、辺りが薄暗くなってくると村の家々に赤い提燈が灯る。村の大人や子供達が祭りに参加するためにぞろぞろと神社に集まってくる。その表情は皆楽しそうだ。
「今夜は楽しくなりそうだな!」
茂みの中で、村の人々の様子を見ながら父ちゃんはそう言った。僕も早く祭りを楽しみたい!
「父ちゃん、僕も早く行きたい!」
「ちょっと待て、まずはお化けに化けないとな!」
「そっか、化けないといけないんだっけ?」
僕は自分用の白い布を手に持った。白い布には生地の真ん中に穴が二つ開いている。被ったときに前が見えるように父ちゃんが穴を開けた場所だ。その持ってきた布を頭から被った。僕達が人間の村に行くと大変な騒ぎになってしまうので、お化けになってこっそりと祭りを見物しないといけない。
「坊主、布を被ったか?」
「うん!」
「準備はいいな?」
「うん!」
準備はばっちりだ!父ちゃんと確認し合うと、僕達は村の祭りの会場へと行った。
夜になると辺りは暗くなり、祭りの会場となっている神社では神主さんが祭りの開催の挨拶をしている。
夜空には星がキラキラと輝いている。
「皆さん、今年も無事祭りが行われる事に神に感謝いたしましょう。それでは今年の豊作の報告と来年もまた実りある年を祈ってこれより収穫祭を開催したいと思います」
そう言うと、村の人たちから歓声が上がりにぎやかな音楽と踊りともに祭りが始まった。
僕達は物陰に隠れて村の秋祭りを見学していた。
「父ちゃん、お祭りって凄いね!」
「あぁ、いつ見てもウキウキするな!」
僕は父ちゃんの様子を見て、さらに村の様子も見てなんだか楽しくて仕方がなかった。
「父ちゃん、あれ何?」
僕は気になっていた神社の敷地内に出ているお店の様な物を指差した。
「あれはな、『屋台』て言うんだ。いろんなところから集まって、祭りの中に小さなお店を出しているんだ。しかもあのお店はな、小さく折りたたんで持ち運ぶ事ができるんだぞ!」
「へ~、凄いね!あのモコモコした雲見たい物は何?」
「あれはな、『綿飴』っていう食いもんだ。食べるとものすごく甘いぞ!」
「じゃそこで、パシャパシャ水を叩いている人たちは何をしているの?」
「うむ、あれは『金魚すくい』だな。小さな魚を捕まえているんだ。獲った魚は持ちかれるんだぞ」
と、父ちゃんは僕にいろいろ教えてくれた。
祭り見物をして随分経った気がする。僕はおなかがすいてしまった。
「父ちゃん、おなかがすいた……」
「何!?腹が減ったのか!?」
「うん……」
「うむ……、どうするかな。う~ん、人間の物を食うわけには行かないしな。――ちょっと待ってろ!」
「――うん」
そう言って父ちゃんは、神社の裏庭を駈けて行った。
遠く暗闇の中を父ちゃんが被っている白い布が、ばさばさ揺れてまるで幽霊みたい見えた。そっか、あれがお化けって言う者なのか。僕達はいまお化けになっているんだね。
それにしてもおなかがすいたな……。
僕は父ちゃんが帰ってくるまでの間、ちょっとだけ神社の倉庫の中を覗いてみた。その倉庫の中には小さな神社見つけた。その小さな神社はちょうど僕がすっぽり入るくらいの大きさの部屋があって、僕はそこで休憩する事にした。ここなら誰にも発見されないよね♪
「坊主、飯もって来たぞ!」
どこかで父ちゃんの声が聞こえたような気がする。すると、
「やべ、人間が来た!」
そう言うと、カサカサと草むらの音がしてその代わりに野太い声が聞こえてきた。
「これからが祭りの本番だ!皆、神輿を出すぞ!」
「おおおっ~!!!」
そんな声が聞こえたと思ったら、急に小さな神社が揺れ始めた!ばっさりと僕が被っていた布も落ちる。
「え!?何々???」
どうやら僕は、『神輿』という物に入っていたみたい。
怖くなってしがみついていたのだけど、そっと神輿の中にある小窓から外を見てみると周りにはたくさんの村の人たちが神輿を担いでいた!その周りには音楽に合わせて踊ったりする村人達が!
「す、凄い!!僕凄い乗り物に乗っているよ!!」
皆とても楽しそう!遠くの家ではおばあちゃんが神輿に向かって拝んでいる。どういう事なのかな?後で父ちゃんに聞いてみよう!
神輿は村を一周した後再び神社に戻ってきた。 そして神輿はまた神社の倉庫の中へ。
僕は人気がいなくなった後、神輿の中からそっと抜け出した。
「!!!」
すると真っ暗な中白い布を被った父ちゃんが、倉庫の奥から姿を現して僕に駆け寄ってきた。一瞬お化けかと思って、ちょっとだけビックリした。これなら誰が見てもお化けだと思う。
「坊主!心配したんだぞ!!」
「……父ちゃん、ごめん」
「まぁ、無事ならいいか!」
「……父ちゃん」
「ほれ、腹が減っていたんだろう?外で食おう!」
そう言って持ってきてくれた食べ物を持って、僕と父ちゃんは倉庫の裏口から表へと出た。
外に出ると夜の空は星がたくさん煌いていた。祭りの明かりと一体になっていてとても綺麗だ。
「もうそろそろ始まるかな?」
「ん?何が始まるの?」
僕は父ちゃんが持ってきてくれた食べ物を口にしながら聞いてみた。
「これから祭りのクライマックスが始まるんだぞ?」
「くらいまっくす?」
僕が不思議そうな顔をして父ちゃんを見てみると、『ドンッ!』と大きな音がした!
「!!!?何!?」
「見ろ!坊主!!」
父ちゃんの指差したほうにピカピカ光るでっかいお花が咲いていた。でもその花はすぐに消えてしまった。すると、『ドンッ、ドドンッ、ドドドドドンッ!!』と言う音とともにたくさんの花が夜空にたくさん咲き乱れた!
僕はその綺麗な光景をぼ~とした顔で見たいた。
「父ちゃん、この綺麗なお花何なの?」
「これか?これはな、『花火』って言うんだ。」
「花火……、とっても綺麗だよ!」
「そうか!」
「うん!」
夜空を彩る花火を僕と父ちゃんはご飯を食べながら見ていた。この花火を母ちゃんにも見せたいな。
祭りは花火とともに終わった。
皆それぞれ自分の家に帰っていく。
「皆帰っちゃうんだね……」
「また来年もやるかも知れねぇんだ、そんなにがっかりするなよ!」
父ちゃんはアハハハハッと笑いながらそう言った。
「来年は弟も連れて行ってやろうな!」
「うん!」
それを聞いて僕も来年が楽しみになった。来年は僕の弟も一緒にお祭りに行こう!
家に帰る途中の道、僕は父ちゃんにちょっと聞いてみたいと思った事があったんだ。
「そうだ、僕ね。神輿って言うのに乗ったんだよ」
「おお、そうみたいだな」
「そしたらね、村の人たちが神輿を拝んでいたんだよ。何でなのかな?」
「そりゃお前、神輿ってやつは神様が乗る乗り物だからだよ」
「え!?そうなの!?」
「そうさ、神様が神輿に乗って村を見物してたのさ。お前、神様と一緒に村を見物していたのか?こいつは凄いな!」
と、父ちゃんは笑いながらそう言った。
「そっか僕、神様と一緒にいたんだ!だから皆拝んでいたんだね」
「坊主、お前神様と一緒にいたからな。来年はきっといいことがあるぞ!」
「ホント!?」
「あぁ!!」
そう言いながら僕と父ちゃんは山の中へと帰っていった。
今日の祭りの出来事を母ちゃんに教えようと思う。
そして来年は父ちゃんと弟と一緒に祭りに行きたいな。
村の祭りが終わると、今日も山は静かに更けていくのでした。
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