5話「実施訓練(前編)」

あらすじ
擬似空間とはいえ、初めて人間の町に興味津々のリオン。
「発電所」と呼ばれる大きな施設へとやってきた。そこは火を起こして電気を作り出す施設だった。
エネルギーを出す発電所にはマテリアルが良く発生するらしいと言うのだが・・・。

6
人間の町にはいろいろな施設がたくさんあった。
あたしたちは、その施設の一つに来ている。
「ここは何?」
「ここは発電所だよ」
「発電所?」
「火を熾して電気を作る場所だよ。」
「へ~、そんなのがあるんだ。で、どうやって電気を作っている?」
あたしは兄に質問しながら人間の作った発電所という施設の中に入って行った。
「入らないゴミや石炭などを燃やして、そこから出る蒸気や熱を使用してこの装置に送るんだ。するこの装置が回転しそこから生まれる摩擦で電気が発生するんだよ。発生した電気は回線を使って各家庭や企業、そのほかの施設などに届けられる。マテリアルがよく発生しやすい場所だって先生が言っていたでしょう?」
「えっ?そうだっけ?」
マテリアルピクターになるためには、人間達の生活や社会なども学ばなければならない。
「まったく……、講義を受けていたとき何をしていたの?」
寝てました……とは、言えない。
「え~と、ちょっといろいろと考え事を……」
兄がじと目であたしを見る。
なんというか、あたしは勉強が苦手だ。勉強が苦手ということは魔法も苦手なわけで・・・それでも一応頑張っていろいろ覚えたつもりなんだけど、やっぱりそうは行かないよね……。
「すみません~、寝てました!」
と、観念して兄に向かって元気に言う。
「まったくもう……」
「えへへへへっ」
「でもここには、マテリアルはないみたいだね」
「ふぇ?マテリアルがない?何でないの?」
「ここの発電所は動いていない。動いていないということは、エネルギーが発生していないということ。町の中をある程度見た後ここに来たけど、施設が稼動しているところとしていないところがあるみたいだね。ここは稼動していない場所のようだ」
そっか、マテリアルはエネルギー結晶体。ゆえにエネルギーを出す発生場所などによく出現することが多いと先生も言ってた。まぁ、何もないところにもマテリアルは存在するんだけどね。
「ここに来れば、火か雷のマテリアルが手に入ると思ったんだけどな~」
兄がそんなことを言っている。
確かにここは火と雷のマテリアルが発生しそうな場所ではある。
「でも装置が動いていないとマテリアルも発生しないんでしょう?だったらもうここには用はないんだし、他のところを探そうよ。」
「そうだな……、他のところへ行こうか」
そう言って兄は今度は空を見上げてみた。
「上空に雨雲とかないかな~、こういう町は結構にわか雨とかありそうなんだけど……」
「その土地の気候にもよるんじゃないの?よく分からないけど……」
などと、あたしも適当に言って見る。確かにマテリアルを集めるのなら自然の中のほうがいいよね。こんな人工的な場所にマテリアルがゴロゴロとあるわけもないし。
「とりあえず、感知魔法でマテリアルがどこにあるか確認してみようか?」
「それ、さっきやったけど反応なかったよね?ここに来たときも微妙な反応だったから着てみたけど……、その魔法ってあんまり役になってないんじゃないの?」
「う~ん、でもこれは一応マテリアルピクターの専用魔法だから……、俺はなんとも言えないけど……」
兄も自信なさそうに言う。ここに着てからマテリアル感知魔法を何度も使ったんだけど、まぁなんというか実に微妙な魔法で『なんかここにありそうな気がする』というような「直感」みたいなものの魔法なのだ!しかもこれがマテリアルピクターの専用魔法って言うんだからどうしようもない。
「あれだ、魔法レベルが上がればきっと役にたつと思うよ!たぶん……」
兄が自分でフォローを入れつつ言ってはみるものの、やっぱり自信がない様で……。
ふ~、こんなんでマテリアルが見つかるんだろうか?心配になってきた。
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