5話「実施訓練(前編)」5
あらすじ
実施訓練を受けるためにフィールドに入ったリオンと兄のアルデル。
初めて見る擬似空間で作られた、人間の住む町に興味津々だ!
リオンが試しに物に触ってみようとしたら……なんと、手がすり抜けたのだった!
5
高々と笛の音とともに一斉にみんなが実践フィールドへと入っていく。
あたし達が入った場所は大きな建物が並ぶ町並みだ。フィールドに入るときはみんな一緒だったけど、中に入った瞬間別の場所へと飛ばされたみたい。そこは人間界の町並みだろうか? 背の高い建造物が立ち並ぶ。みんなそれぞれスタート地点が違うということだろうか?
そして奇妙な違和感が襲い掛かる、中に入って分かったのだがフィールドに入ると体が重くなった!
「ねぇ、これって!?」
「どうやらこのフィールドは、物質界を再現しているみたいだね!」
兄のアルデルがそう答える。
「へ~、だからブレスレット入らないって事なのか~。あのブレスレットは物質界に適応するためっていってたもんね」
「とりあえず、マテリアルを探そう。いっぱい見つけてランキングの上位を目指さないとマテリアルピクターに近づけないからね」
「そうね。さてマテリアルはどこにあるのかしら……?街中にもマテリアルってあるの?」
こんな近代的な建物に中にマテリアルなんてあるのだろうか?そう思いつつあたしは、近くにある高層ビルの建物に顔を近づけてみた。ガラス越しにかわいらしい小物やアクセサリー、バッグなどが飾られている。どうやら人間界のアクセサリーショップのようだ。
「かわいい~」そう言ってあたしはガラスに手を掛けた。すると、
「!!!?・・・ひ、ひゃ~~~~!!!!」
「リオン、どうしたの!?」
兄が慌てて駆け寄ってくる。
「見て見てほら!!手がすり抜けるよ!!これって何かに幻影?なんかすご~い!!」
「リ、リオン……」
あたしがガラスに手を掛けようとしたら、なんと手がすり抜けるじゃないですか!!!
出したり引っ込めたりして遊ぶあたしを見て、兄貴があきれた顔をする。
「兄貴も見てないで、ほら!面白いよ!!」
「あのね、リオンそんなことして遊んでいる場合じゃないだろう?早くマテリアルを探さないと……」
「ぶーーーっ、いいじゃない少しくらい~。でもなんで手がすり抜けるんだろう?やっぱりこの町って幻?」
あたしが疑問を口に言うと、
「違うよリオン、俺達が幻みたいな存在なんだよ」
「どういうこと?」
「たぶん、このフィールド自体が物質界と同じなんだ。この中での俺達は精神体と呼ばれる存在になるらしいね。つまり、物質界では俺達には肉体がないから、こんな風に物質に接触することもなくすり抜けることが出来るんだよ」
そう言って兄もあたしのように手を壁に触れて見せた。もちろん、その手はすり抜けていく。
「へ~、でもそれってあたし達がこんな状態だとここに存在しているマテリアルも採れないってことだよね?マテリアルは半物質だって言うし……」
「マテリアルを採る時だけ、半物質化すればいいんだよ。そうすれば余計な魔力を使わなくても済むし、長くこの場所にとどまることも出来る。それに実際に採取するときはこの武器を使えばいいわけだし」
半物質化訓練は何度もやったので覚えている。確かにあれは結構疲れるので、マテリアルを採る時くらいにしか使わないほうが無難だ。
遊ぶのはやめて早速マテリアル探しをするあたし達。
「他の人も着たら奪い合いになるのかな……?」
「たぶんね……、そうならないように早く見つけよう」
とはいえ、この広い町並みどう探せばよいのやら……。
「人間の町がどうなっているのか思い出してみよう。何かヒントになるかも?」
「人間の町?習ったっけ?」
「リオン……」
「あははははっ!」
どんな内容だっけ?あんまり覚えていなかったりする。
もう少し講習内容勉強すればよかったと、今さら思うのだった。
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