5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
実施訓練を受けるため専用フィールドへと向かうリオン達。
その頃受けることが出来なかった研修生達は、教室で実施訓練の内容を講師の先生から聞いていたのだった。
※いろいろやっていてアップが遅くなりました^^;
3
午後になると、掲示板で実践訓練の名簿がない人はみんな教室に集まっていた。訓練が受けられないということは、彼らはどうなるのだろう?
「リオン、早く訓練場へ行こう。何をボーとしているの?」
兄のアルデルがせかす。
「う、うん……。訓練が受けられない人はどうするのかな~ってちょっと気になって……」
「それは講師の先生が決めることだし、俺達はどうにも出来ないよ」
そういわれても気になるものは気になる。
仕方なくあたしはジャージに着替えて、実施訓練の特殊フィールドがある施設へと行くことにした。
そのころ訓練が受けられない人たちがあたしのクラスの教室に集まっていた。そこには数人の研修生がいてフロン先生が彼らにこう告げていた。
「君達はマテリアルピクターとして仕事をするのには少し魔力と体力が足りないところがあります。実施訓練とは別に強化訓練を行ってもらいますので、皆さんはこれからこのカリキュラムにしたがって訓練をしてください。」
フロン先生がそう言うとひとりの研修生が、
「先生、あたしたちマテリアルピクターになれないわけじゃないんですね?」と疑問を投げかけた。
「もちろんです、あなた達はこの半年積極的に訓練を行い十分に力もつけてきました。この半年で脱落した人もいます。でも皆さんは厳しい訓練にも耐えているのですよ、マテリアルピクターになれないなんてそんなことはありません。
ただ実践訓練に入るには特殊な条件がいくつもあります。それらに耐えうるには少し力が足りないので、この強化訓練で鍛えましょう」
先生はニッコリと笑い研修生に安心して訓練を受けるようにといった。
「ただ実施訓練は半ばサバイバルに近いので厳しい訓練が必要です」
「サバイバルってどういうことですか?」研修生の1人が質問する。
「実施訓練はフィールド自体が人間界の環境と同じ設定になっています。その中で確実にマテリアルが採れるのかを試すのです。マテリアル自体もほぼ人間界にあるものと似た物を使用しています。そしてこの実施訓練の最大の特徴は、マテリアルの採取による戦闘とランキングです」
「ランキングは分かりますが、マテリアルの採取による戦闘ってどういうことですか?」
研修生の1人が少し不安そうに聞いた。
「この実施訓練は文字どおり、マテリアルピクターの仕事と同じことをしてもらいます。マテリアルピクターはこの第7施設以外にもいることは知っていますよね?
実はここ最近、マテリアルの横取りが増えているのです。担当のエリア以外からマテリアルピクターが進入し受け持ちエリアのマテリアルを奪ってしまうということが多発しています」
「えっ!?それってどういうことですか?マテリアルって決まったエリア内にあるから採取できる物であってそんな奪ったりする物なのですか?」
研修生達はビックリして、顔を見合わせた。するとフロン先生が、
「確かにエリア内のマテリアルを採取するのが基本的な仕事ですが、マテリアルはそもそもエネルギーの塊です。自分のエリア内のマテリアルが少なく力も弱い場合、彼らの収入も減るしそこを拠点にしている地域のエネルギーも不足してしまいます。もしマテリアルが自分のエリア内に存在していなかったらどうしかすか?」
「他の所で探すしかない……?」
「そう言うことです」
「それじゃ、戦闘訓練とかって……」
「そうです、横取りを防ぐために必要な戦闘訓練なのです。本来採取エリアは魔界の司法に基づいて決められたこと。ですが、現場にいける人はごく限られています。つまり横取りしたという事実を証明することは難しいということです。なので一番手っ取り早いのが、戦闘による防衛ということになります」
「――――じゃ、採取中に大怪我をするって……」
「まぁ、マテリアル相手に大怪我をする場合もありますし、別センターのマテリアルピクターとの戦闘による負傷もあるでしょうね~。
まぁ、同じエリア内の仕事であれば横取りしてもOKと言うのもありますので、別センターの方との戦闘で負傷ではなく中には同僚からの攻撃を受けて負傷したということもありえますね」
「つまり現場へ行ったらそこはパートナー以外は、みんなライバルってことですか?」
「そう言うことになりますね、だから実施訓練の成績もランキング制度になっているんですよ。世の中は厳しいのですよ」
研修生はみんな顔を見合わせてどうしたものかと思案するが、先生はそんなこと気にせずこれから行うカリキュラムをみんなに教えた。
だがほんとうの意味で、訓練にランキング制度が導入された理由を多くの研修生は知らない。
正規のマテリアルピクターになれば分かる事。フロンはそう思いながら、特別訓練を研修生に教えるのだった。
教室でそんなやり取りがあったとは、まったく知らないあたし。
あたしは、これから実施訓練が行われるフィールドへと向かうのだった。
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