5話「実施訓練(前編)」
あらすじ
実施訓練が受けられる研修生が掲示板で発表されているらしい。
どうやらリオンも訓練が受けられるようだが、なにやら実施訓練の成績がランキングで表示されるらしいみたいで……。
2
「遠見の魔法を使えば、掲示板が見れから実践訓練が受けられるか分かるね」
兄がそう言って廊下に出ている掲示板を見ている。
イライザに言われたとおり、遠見の魔法を使ったおかげで掲示板に書かれている訓練参加名簿が見れるようになった。それにしてもあの言い方ってない様な気がする。まるでケンカを吹っかけているみたい。
「あっ!」
「ん?どうしたの?」
「俺達の名前が載っているよ!やったね、実践訓練が受けられるよ!」
「本当!?」
なんと、あたしは実践訓練に参加できる!これでマテリアルピクターに近づいた!!
あたしが喜んでいると、兄貴が再度掲示板を覗いてみる。
「ちょっと待って、まだ何か書いてある。どれどれ……、『実践訓練では実際にマテリアルをどれだけ採取できるかをランキング付けで評価します。最初にくじ引きで選ばれたペアでマテリアルの採取を行ってもらいます。成績つまりマテリアル採取数がもっとも多いペアは、率先してマテリアルピクターとして仕事に参加してもらいます。ランキングは毎月行われ、上位3組が選ばれ仕事に参加できます。仕事といってもまだ研修生なので、先輩のマテリアルピクターの補佐を行う仕事になります。』だって」
「ラ、ランキング形式!?」
「そうみたいだね……」
ということは、実践訓練に選ばれたものはみんなライバルということになる。
ひょっとして、イライザが言っていた事ってこの事だったのだろうか?
「ねぇ、それってさ……、これからが大変って事なのかな……?」
「…………」
兄も神妙な顔つきで言う。
もしランキングで3位以下だった場合ず~と実践訓練ばっかりやらされて、ちっとも仕事を行うことが出来ないということもある。
「ねぇ、もしかして全然仕事に行くことができないって事もあるのかな……?」
「さすがにそれはないと思うよ?研修はあくまで10年間なんだし……、10年の間仕事をすることが出来なかったとしても研修が終わればみんなマテリアルピクターになれるわけだから大丈夫だと思うよ?」
「そ、そっか、そうだよね!でも、10年間も訓練って言うのも結構きついかも……」
あたしがそう言うと、
「そのためにも頑張って実践訓練でいい成績を獲ろう!」
「うん!」
「リオンの借金もあるしね」
兄がニッコリと笑って言う。
「はっ!!!」
しゃ、借金!!!
そ、それを言わないで欲しいですけど~!!!
このときあたしは兄貴に言われるまで、自分の借金のことをすっかり忘れていたのだった。
そうだった……、あたしには多額の借金があったんだけ……。
そのまま忘れていたかった……、トホホ。
5話-1へ
5話-3へ
目次へPR
この記事へのコメント