4話「採取訓練」
あらすじ
リオン達研修生が苦戦している頃、その様子を見ている講師の先生2人。
いろいろと何か話している様。
それと同時に初日の訓練は終わろうとしていた。
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あたし達が偽マテリアルに苦戦している頃、先生達はその様子を眺めていた。
「あそこのチームはなかなか頑張っているな。向こうのチームは……ダメか。」
そう言って、小型端末記帳にチェックを入れていく。
「ジャンカン先生、みんなの様子はどうですか?うまくやっていますか?」
「フロンか、まぁ、そこそこというところかな?」
「ところで、アルデルたちのチームはどうですか?」
「彼らか?それなりにいい感じにはなってきているな、やはりこういう作業は実践で覚えたほうが早い。うまく採取できたチームは実際に2組になって本格的な訓練をした後、実践練習に移りたいと思う。」
「実践練習ですか?早くないですか?」
「そんなことはない、実力さえあれば研修生でも現場への本格的な投入も可能だ。たくさん経験を積んでりっぱなマテリアルピクターになってもらわないとな。」
「確かにそうですが、彼らはまだ子供ですよ?実践練習を行ったとしても、はたして向こうへ行って大丈夫なんでしょうかね?人間界は複雑ですから……」
フロンはジャンカンの話を聞いて少し不安になった。人間界といってもいろいろあるのだ。初めて受け持った生徒達が危険な目に遭うかもしれない。生徒のほとんどは戦いなれしているわけでもないし、人間界の知識が豊富というわけでもない。研修生とはいえ彼らもマテリアルピクターの一員として仕事をしてもらわないといけないのは分かる。遅かれ早かれ、人間界へいってマテリアルの採取をしなければならないのだ。現状のマテリアルピクターは圧倒的に数が少ない。優秀な成績を収めた研修生は早いうちから現場へ行くことが多い。だが経験不足から大怪我を負って帰ってくる者も少なくない。
フロンはマテリアル研究者でマテリアルのことはよく知っている。このエネルギーの塊ということ以外、未だよく分からないこの物質を採って来るマテリアルピクターが、いかに危険と隣り合わせなのかを研究してみればよく分かる事だった。
「お前が心配するのも分かるが、マテリアルピクターは世界のバランスを保つためにもになくてはならない存在だ。もし彼らがいなかったら大変なことになる」
「ええ、それは分かっています……」
「何、あの子達はまだ訓練を始めたばかりだ。ここでたくさん練習して鍛え上げれば、そんな大怪我負うようなヘマをやらかすような半端もんにはならないさ。
それにここに来た子達は、みんなマテリアルピクターになりたくてやってきた子達だ。
よく見ろ、みんな一生懸命頑張っている。俺達はあの子達に精一杯いろいろ必要なことを教えればいいのさ。」
ジャンカンはフィールドで偽マテリアルと格闘している研修生を見て満足そうにそういった。
「そうですね。」
フロンもその光景を眺めてそう同意した。
講師の先生たちがのん気にそんな話をしている頃、あたし達はやっとマテリアルのシールドの破壊に成功した!
「やった!!やっと破壊したよ!!」
汗だくであたしがガッツポーズをとる!いや~、大変だった!!
マテリアルを守る防御壁(シールド)は一見目に見えないが、薄い空気の膜のようにも感じる物それが破壊されると場の空気が変わるのが分かる。この場合マテリアルの属性が雷だったのでさっきまで場の空気は物凄い緊張感が走っていた。この場の空気とはいろいろあるみたいでこの場合は相手の神経を高ぶらせる効果があったのだけど、今は空気が澄んでいてなんともない。
「油断はダメよ!すぐにシールドが回復するかもしれないわ!採るなら今のうちよ!!」
イライザがせかす。
「う~、せっかく気分いいのに……!」
「リオン、早く採ろう!でないと、授業終わらないよ!」と兄貴まで!
確かに、早く採らないとまた新たなシールドを作ってしまうかもしれないのでさっさと済ませないといけない。
「で、誰が採るの?」
とあたしが聞くと
「この場合はチームリーダーでしょう」
とナナオが答える。
「そっか、じゃ兄貴が取ればいいんだ」
「まぁ、そう言うことになる」
「アルデル様、頑張って!!!」
「う、うん……」
兄が少し緊張気味にマテリアルに歩み寄って、先生から支給された収納コンパクトにマテリアルを近づけてキーワードを唱えるとマテリアルはコンパクトに収納された。コンパクトにはマテリアルの個数、質量やパワーなどが表示される。へ~こうなるのか。ちなみに収納するにはキーワードが必要だ。キーワードはそれぞれ個人で決めるのだけど、何故そんな物があるのかというとマテリアルを悪用されないための処置らしい。
まぁ、なんとなく分かるけど。
マテリアルが採取されるとあたし達の周りにあった結界が消えていく。やっと初めての採取訓練が終わったのだった。
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