4話「採取訓練」
あらすじ
マテリアルを採るのに必要な方法の一つとして武器に魔法を掛ける事になったリオン達。
でもリオンだけはうまくいかなかったのだが、ついに武器に魔法を掛ける事に成功したのだった!
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アドバイスどおり、心を落ち着けて・・・つまりリラックスして目をつぶり精神を集中しエンチャントの呪文を唱える。
エンチャントを施す武器に魔力を行くように力をゆっくりと込めていく。そして詠唱が終わり力ある言葉を発するとどうだろう、あたしの手に持っていた鎌が青白い光を放った。しかもそれは消えずに残っている。ついさっきまで霧散しまくっていたのがウソのようだ!
こつさえ分かれば実に簡単だ。
初めて上手くいった魔法にあたしは喜んだ。実に情けないのだが、一発で上手く魔法が発動したのはこれが初めてなのだ。
「すご~い!!出来た!出来たよ!!!」
「リオン、よかったね!!」
兄も嬉しそうに言う。もしかしたら、生まれて初めて一発で魔法が成功した事に有頂天のあたし。
その横でイライザがあきれた顔で見ている。
「変な子ね~、たかだが魔法が成功したくらいで何を喜んでいるの?そんなの出来て当たり前じゃない」
「まったくだ」
イライザとナナオが不思議そうに首をかしげる。
何を~!!?
「いいじゃない!素直に喜んだって!なんか文句でもあるの?」
何!?出来て当たり前だと~、あたしのとっては貴重な一歩なんだぞ~!!
あたしがイライザ達に食って掛かると、
「イライザは魔女だし、魔法が出来て当たり前かもしれないけど俺達はそんなにうまくはいかないんだ。もともと俺達は魔法を扱うのに適した種族じゃないし、どちらかといえば自然の力を扱ったほうが性にあっているんだ。魔力そのもので何かを行うのには向いていないんだ」
兄のアルデルが、イライザ達に対して自分たちの種族が魔法がはあまり得意ではない事を話してくれる。
「でもそれって幼いうちだけじゃないの?成体になると一番魔法の扱いがうまくなるって聞いたわよ?」
「うっ……!」
さすがに兄も言葉に詰まる。
兄の好意は嬉しいが、そこまでフォローしなくてもいいんだよ。なんだかこっちが惨めになってくるから……。
「兄貴、いいのよ。あたしがヘタクソなだけだから、あんまりあーだこーだ言われると悲しくなってくる。」
「リ、リオン……」
兄はおろおろしてあたしの顔を見る。
がっくりと肩を落とし、落ち込むあたし。
「それより早く攻撃に移ろう!術の効果はそんなに長くは続かないんだ。みんなで一斉に攻撃してマテリアルを採ろう」
そんな様子を見ていたナナオが、術の発動時間を気にして皆に忠告するのだった。
そうだった、今かけたエンチャントは一時的なもの。効果時間が過ぎればまた魔法を掛けなおさなければならない。ウダウダしゃべっている場合じゃない!
「そうね、早速採取しましょうか!」
そう言うと、イライザたちは自分の武器に再度『魔力付与』の呪文を施す。
それぞれの武器にエンチャントを施して、マテリアルのシールドに攻撃を加えるあたし達。
あたしの武器は思いっきり切りつけるタイプなので、そのまま突撃して武器を振りかざす。反撃を受けてダメージがいかない様に兄が守りの魔法を掛けてくれる。一方イライザはエンチャントで強化した自分の杖にさらに自分の魔力を上乗せして、そこから魔力弾を打ち込んでいる。今度はマテリアルに無効化されずにそのままシールドにダメージを与えているみたいだ。
ナルホド、ああすれば普通にダメージを与えることが出来るのか……。
あたし達が攻撃を命中させるようになると、マテリアルの方も活発に動き出す。その動きが突拍子もない物だった。
そう、まるで瞬間移動でもしたかのような動き。マテリアルに向かって鎌を振り下ろしたとき、そこにあったはずのものが消えていた。最初は何が起きたのか分からなかった。
「消えた!どういうこと!?」
「どうやら、自分を一時的に分解して再構成しているようだね」
兄がそう解説する。
「再構成!?瞬間移動じゃないの?そんな話聞いてないよ!」
「マテリアルの特性を考えればありえる事だと思う。」
「意思があるわけでもないのに、こんな動きを普通にするの?」
「まぁ、そう言うことなんだろうね……」
う~ん、なんともはや難しい。こんな物をマテリアルピクターの人たちは頑張って採ってきているのか……。
「案外この仕事って大変なのかも……」
あたしがそう言うと、
「何を今さら、随分前から分かりきっている事でしょう?難しくて危ない仕事だって学校の進路相談のときに嫌ってほど聞いたはずじゃなかったのかしら?それとも何、今から転職でもするつもり?まぁ、あなたが脱落しても誰も止めませんけど。」
イライザがイヤミったらしく言う!
うぬ~!誰もやめるなって言ってないもん!!
「こら~~!!そこのお前、ちょこまかと逃げやがって!絶対、採ってやるからな~!!!」
あたしはマテリアルに向かってそう吼えたのだった。
「――何言っているのかしら、ホント馬鹿な子ね~」イライザがその横であきれ顔で言った。
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