4話「採取訓練」8
あらすじ
マテリアル採取訓練の最中なにやらみんなが騒いでいるので、ちょっと気になったリオン達。
他の研修生の話を聞くとどうやら妖精族がいるらしい。
本当かどうかは分からないらしいが、どうやらマテリアルを識別するにはオーラつまり波動が見えるほうがいいようなのだが、リオンにそんな技術はない。
結局自分達で工夫して採るしかないようで・・・。
8
「リオン、よそ見してないでこっちもマテリアルを採ろうよ!」
無駄な言い争いをしていたあたしたちを見て、不満顔の兄アルデルが呆れた感じ言う。
まぁ、確かに相手のことをあーだこーだ言ってもしょうがない。今は自分たちのことをやらないといけないのだから……。
「で、どうするの?どうやってこのマテリアルを採ればいいの?」
あたしが兄貴に質問する。
「え~、自分でどうやって採ろうか考えてないの?」
「だって、そんなの考えるの面倒だもん」
あたしがそう答えると、兄貴はあきれたようにため息をついた。
「アルデル様。わたくしにいい考えがありますわ!リオンはどう見ても物事を考えるのは難しいようですから……」
イライザがあたしを見てそんな事を言う。
ムカつく~!
ふん、どうせ考えるのは苦手ですよ!あたしはそっぽを向いた。
「リオン……」
兄が心配そうにあたしを見る。
「リオンは無視して、とりあえずマテリアルを採りましょう。武器と魔力を同調させるのはまだ無理かもしれませんが、魔力付与する事でマテリアルのバリアを破壊することは出来ると思いますの」
「なるほど、エンチャントですね?イライザ様」
ナナオがイライザの意見に同調する。
※解説:エンチャントとは、魔力を物質に与える魔法である。方法としては2種類あるのだがここで使うエンチャントは簡易式で効果もそれほど長くない戦闘や一時的に物を丈夫にしたり、物を強化したりするなど技術魔法としては初歩中の初歩魔法である。これらの術が得意な魔法使いをエンチャンター(付与魔術師)と呼ぶ。
「相手は雷属性だからその逆の力を込めればいいんじゃない?」
あたしはそっぽを向きながら意見を言った。するとイライザが、
「馬鹿ね~、そこらの弱い低レベルな属性付与魔法なんかマテリアルには一切聞かないわよ」
「じゃ、どうするのよ!?」
「あたし達が持っている武器は普通の武器とは違うって教えられなかった?」
「?」
「マテリアルピクターの扱う武器はみんな魔力が込められているのよ、同調は出来ないけれどこの武器のある程度の魔力を上乗せすれば力は数倍に膨らむはずよ。
しかも武器の特性も一気に上がるからさまざまな効果も得られるはず。でも本来は、同調しないとすべての力を発揮することは出来ないみたいだけど練習用のマテリアルくらいならどうにかなるはずよ!」
「それってつまりさ、ありったけの魔力を武器に上乗せしろって事・・・?」
「まぁ、そうとも言うわね」
イライザがちょっと罰の悪そうな顔をする。考えた結果がこれですか?
「……、それってさ属性云々は関係ないよね?」
「……」
「ようは力任せって事?」
イライザがちょっと目線をそらす、たぶんやっぱりそう言うことなのか。
武器にありったけの魔力・・・まぁほどほど?を「注ぎ込む」は無理なので上乗せして「本来の武器の威力」+「自分の魔力」を相手にぶつける、もしくは切りつけるという方法になるわけだ。でもこれって短時間しか持たないよね?エンチャントだからしょうがない。これが同調出来れば何時間でも出来るみたいだけど……、今は無理か。
あーだこーだ言った割には、結局力押しという作戦しか思いつかなかったという事だ。
「それじゃ、みんなやってみよう!」
「そうだね、さっさとやって終わらせよう!」
あたしと兄貴は顔を見合わせてそれぞれの武器にエンチャントを施した。
しょうがないか、力押し作戦を実行するために、あたしは『魔力付与』呪文を唱えるのだった……。
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